Music Review : T
TAKARA / TASTE OF HEAVEN 【82点】
TALISMAN / TALISMAN 【83点】
TALISMAN / GENESIS 【91点】
正統派ヴォーカリストの代表的存在、ジェフ・スコット・ソートと天才ベーシストマルセル・ヤコブのバンドの2nd。キラキラしていた1stからすると一転、まさにメタルの王道をいく楽曲・リフの応酬。たたみかける#1「Time After Time」#2「Comin' Home」#3「Mysterious」の流れ、アレンジを凝った名曲#4「If U Would Only Be My Friend」、イントロのギターとベースのユニゾンが絶品の#5「All Or Nothing」、そしてフックのあるメロディアスな#9「Give Me A Sign」と、美しいメロディの上にジェフ独特のグルーブ感のある伸び伸びした歌唱がのる、完成度の高い楽曲がひしめく。(H)
TALISMAN / HUMANIMAL 【83点】
TALISMAN / LIFE 【85点】
TALISMAN / TRUTH 【82点】
かつてのようなゴージャスなサウンドは影を潜め、わりとシンプルなプロダクションになっている。いきなりQUEENのカバーで始まる#1や、彼等独特のメロディの癖が露呈した#3あたりを聴くと肩すかしを喰らった感も。それでも遅まきながらマドンナのカバー#10以降は安定した楽曲群で固められていて一安心した。得意のHMチューンは#12#13だけとさみしく、ほとんどがミドルテンポでグルービーなオーソドックスなスタイル。なんとなく落ち着いてしまったなあという気もする。それでも相変わらずのマルセル・ヤコブのすさまじいベースプレイは健在だし、ジェフもPRINCEのカバー#4で超人的なヴォーカルを存分に披露してくれている。(H)
TALISMAN / 7 【80点】
TAXIRIDE / IMAGENATE 【80点】
TAXIRIDE / GARAGE MAHAL 【88点】
オーストラリア出身のメロディアス・ロックバンドの2ndアルバム。透明感のあるサウンドとキャッチーなメロディが売りで、全員が歌うシンガロングが絶妙。クセもハードネスも皆無で、ひたすら心地よい爽快感に覆われる清々しい音楽だ。歌メロに比重を置いた楽曲はいずれも印象的なフックを持っていて、#1「Afterglow」、#2「How I Got This Way」、#4「Forest For The Trees」、#6「Saffron」、#9「Skin」等々、ツボにハマる佳曲多数。特にアルバム中最も強烈なフックを持つ#6「Saffron」はメロディ派要チェック。SEVEN AND THE SUNなどが好きならまずヒットする、でしょう。(H)
TAXIRIDE / AXIOMATIC 【79点】
TEN / TEN 【94点】
ゲイリー・ヒューズとヴィニー・バーンズという新たな名コンビを生んだ、エモーショナルなハードロックの歴史的名盤。ポップでコマーシャルなアメリカンタイプの曲から憂いに満ちた欧州ブリティッシュロックまで、ことハードロックのオイシイ部分を全て詰め込んだような楽曲がひしめく。特に#2「After The Love Has Gone」と#10「The Loneliest Place In The World」を筆頭とする哀愁系ブリティッシュハードロックナンバーの質が果てしなく素晴らしい。その「After The Love Has Gone」のメロディアスなリフといかにも英国の煮え切らないコーラスのメロディの調和は筆舌に尽くしがたく、大作「The Loneliest Place In The World」の壮絶ギターソロの泣きは絶品。終始メロディに拘る姿勢は美しい。(H)
TEN / THE NAME OF THE ROSE 【93点】
デビューアルバムからわずか半年というスパンを経てリリースされた2nd。楽曲はすでに1stのころに出来上がっていたという。しかし、それは1stの余った曲を寄せ集めたものではなく、同等レベルの質で出したところに彼らのポテンシャルの高さを見いだせる。オープニングを飾る#1「The Name Of The Rose」はHR/HMの魅力を凝縮した名曲だ。叙情的なイントロから一気に炸裂するシャープでスピーディなリフは初めて聴いた時身悶えた。#2「Widest Dream」#3「Don't Cry」#4「Turn Around」と甘くてポップな佳曲が並んだ後、インストを挟むドラマティックチューン#6「Wait for You」、憂いのあるミドルテンポの#7「The Rainbow」、紡ぎ出すメロディが美しい#8「Through The FIre」、普遍的なロックバラード#11「Standing In Your Light」と、ハイライトとなる曲がバランスよく配置されている。中には冗長な曲もあってアルバム全体ではだれる部分もあるが、これはゲイリーの趣向なので、目をつむってしまおう。(H)
TEN / THE NAME OF THE ROSE(EP) 【90点】
アルバム未収録曲「When Only Love Can Ease The Pain」は、アルバム収録曲以上の名バラード。ささやくようなゲイリーの歌唱が際立っており、そこから盛り上がるサビメロがまたたまらない。「After The Love Has Gone」のライブテイクもとっても素晴らしい。(H)
TEN / THE RAINBOW IN THE ROSE(boot) 【83点】
TEN / THE ROBE(EP) 【85点】
TEN / THE ROBE 【90点】
まるで風呂場で録音したかのようなエコーのかかりまくったサウンドに最初ドッキリしたが、相変わらず哀愁に満ちあふれた作品に仕上がった3rd。ゲイリーの長編志向は更に強まり、オープニングのタイトル曲#1「The Robe」からして10分の大作。ただ、その長さを感じさせるようなものではなく、きちんとその中で起承転結している展開は前作からの成長と言えよう。まぁ、個人的にはEPでのコンパクトなショートバージョンの方が好感が持てるのだが。その後もクドイほどのクサメロと大作を並べ、ゲイリー・ワールドを見事に構築、ヴィニーも官能的なフレーズを弾きまくる。松田聖子の「あなたに会いたくて」と聞き違えるほどのイントロで始まる#5「You're In My Heart」でのゲイリーの歌唱は素晴らしい。生で2回聴いたけど、ほんとに惚れ惚れする声だ。(H)
TEN / YOU'RE IN MY HEART 【85点】
TEN / NEVER SAY GOODBYE 【94点】
TENのライブは最高だった。これまで観た中でもベストだ。ゲイリーは伸びのある声でCDでの見事な歌唱を同様に再現、ヴィニーも観客を煽りながら自由自在にギターを操っていた。このライブアルバムは様々の公演からベストテイクのみを集めて編集されたものであり、その手間の甲斐あってか非常にクオリティの高い一枚になっている。2枚組という豪華さで、ベストアルバムとしても楽しめるだろう。聞こえてくる音からは実力の確かさが明確で、この1枚で彼らがライブでも素晴らしいパフォーマンスをしてくれるということを実証した。
ちなみにブックレットの中に僕が写ってます。遠目に。(H)
TEN / SPELLBOUND 【96点】
TENの美味しいとこどりの最高傑作。センス抜群のアプローチとワンランク上にあがった表現力から生まれる充実度、さらには冗長で貧弱なプロダクション等の弱かった部分が改善された隙のないアルバムだ。ひたすらメロディに拘る楽曲の質量は文句なく、今回も今まで以上に練られた構成・展開が心を揺さぶる。映画のサントラかと思わせる劇的なオープニング#1から続く#2「Fear The Force」はTENの中で最高のドラマティックな曲。WHITESNAKE風の#4「Spellbound」、否応にもゲイリームーアの「Over The Hills And Far Away」を彷彿とさせる#7「Red」を含むケルティックナンバー3曲、TENらしい哀愁の上にヴィニーの狂おしいギタープレイが堪能できる#8「The Archemist」#10「Ecripse」、そしてお得意のバラード#9「Wonderland」#12「Till The End Of Time」と、洪水のように押し寄せる珠玉のメロディの数々にただただ飲み込まれるのみ。単一楽曲をコンパクトにし、密度の濃い中でドラマを炸裂させる方法論は見事。ヴィニーのプレイはより光っている。一生手放せないアルバムだ。
TEN / FEAR THE FORCE 【83点】
TEN / BABYLON 【84点】
相変わらずゲイリーの世界観はさっぱりわからず、ジャケットはダサさ100%。コンセプトの意図もよくわからないし、何より曲間のナレーションがジャケットのイメージと結びつけるとかなり陳腐でシラける。 ...と文句だけ先に吐き出しておいて、楽曲の方はというと、前作のようなインパクトもキラーチューンもないが、TENらしいメロディが満載で十分楽しめる仕上がり。心配された拝借メロというのも僕にはあまりわからない。派手さはないがドラマ性溢れる#1「The Stranger」、ヘヴィなバッキングに明確な歌メロが乗る#2「Barricade」、キャッチー&ポップな#3「Give In This Time」、堂に入った貫禄のバラード#6「Silent Rain」、#10「Valentine」と、聴きどころ豊富。前作が空前絶後の名盤だったのと、本作の前評判があまりにも悪かったので下手に期待をしないで聴いたのがよかった。あれだけ多くの名曲を書いてきた人間が、急に楽曲の質が落ちるなんてありえない。(H)
TEN / FAR BEYOND THE WORLD 【92点】
自己の本質を追求し原点回帰に成功した素晴らしいアルバムだ。ここ数作は、良くも悪くもゲイリーの大作志向がアレンジと楽曲の質のバランスの中で調和が取れたり取れなかったりという状態が続いていたが、本作では大作志向を捨ててでも(でも平均5分後半)良い曲を書こうという、メロディへ心血を注ぎ込んだ姿勢が如実に曲に反映されている。どの曲も起承転結がはっきりし、明快なフックがあって親しみやすい。個人的には、アルバムを強烈にリードするキラーチューンが見あたらないのと、4th「SPELLBOUND」にあったドラマティックに胸を締めつけるタイプ曲がないのが寂しいが、アルバムとしてのバランスは非常にいいし、ゲイリー・ヒューズ面目躍如、ソングライターとしての力は本物だということを立証してくれたことが何よりも嬉しい。それにしても、本作でも光輝いているヴィニーのギターを聴いていると、脱退という現実が信じられない。#11「Outlawed And Notorious」の壮絶な速弾きで、出てくるのは涙のみ...。(H)
TEN / RETURN TO EVERMORE 【81点】
ヴィニー・バーンズが脱退した後も2作にわたる叙情詩「ONCE AND FUTURE KING」をリリースするなど、相変わらずのワーカホリックぶりでリリースを続けているゲイリー・ヒューズ。もちろんソロ作もよかったが、全編通してゲイリーの歌声が聴ける、バンドとしてのアルバムは本当に待ち遠しかった。新加入のクリス・フランシスについてはそれほど期待していなかったが、「ONCE〜」ではそれなりのパフォーマンスを見せてくれたので、このアルバムではさらにバンドに溶け込んでくれているとの希望的観測もあって臨んだのだが…。正直言って、TENの作品としては不満の多い内容。最初の2曲のただダラダラと長いイントロや#3「Evermore」の最初の安っぽいフィドル(?)、#6「Even The Ghosts Cry」の導入部での意味不明(失礼)なGソロ…と、緊張感を殺いだり遮断したりするような場面がたくさん。このバンドは冗長な曲の中にもしっかりドラマを作り出していたのだけど、今回はちとキツイ。楽曲面においては#2「Dreamtide」の素晴らしくキャッチーなサビや、バラードのキラーチューン#4「Sail Away」あたりに最大級の魅力を感じたものの、それ以外の曲はどれも平均的。
ギタリストが変わったんだから仕方ないけど、このバンドのトーン&マナーのようなものはどうしても違ってしまうので、「ゲイリーの歌があればTEN」とは割り切れない僕のようなリスナーにはちょっと厳しい。もうすこし、ゲイリーのソングライティングのセンスでカバーしてくれるとよかったんだけど。(H)
TEN / THE TWILIGHT CHRONICLES 【86点】
英国のメロディックHRバンド、TENの通算8作目。グレッグ・モーガンとスティーブ・マッケンナが脱退した模様。映画のサントラみたいな雰囲気はソロ作の「Once And Future King」に近い感じで、大作な印象を与えるアルバムだ。ゲイリー・ヒューズのメロディメーカーぶりがいかんなく発揮された力作。失望すら感じだ前作を遙かに凌ぐ内容といえる。それゆえに相変わらずの冗長な曲づくりが良さをうち消してしまっている感じが非常にもったいない。6分7分は当たり前。いつ歌い出すのかわからない場面もしばしば見受けられるのが残念なところだ。秀逸な歌メロを軸にコンパクトにまとめればと思うのは毎度のことなのだが…。クリスのギターは随分良くなってるが、全体を通すと音にバラツキがある。それでもだいぶバンドのカラーに溶け込み、自分の特徴を出せるようになってきていると感じる。それから、セルフプロデュースのプロダクションはそろそろ卒業して、しっかりとしたエンジニアに音を作ってもらいたいな。(H)
TERRAPLANE / MOVING TARGET 【82点】
TERRA NOVA / LIVIN' IT UP 【85点】
TERRA NOVA / BREAK AWAY 【85点】
THEORY OF A DEADMAN / THEORY OF A DEADMAN【79点】
THERION / LEMURIA/SIRIUS B 【80点】
THIN LIZZY / THUNDER AND LIGHTNING 【93点】
ブリティッシュ・ロックのカリスマ、フィル・ライノットのバックに、ジョン・サイクス、ダーレン・ワートン、スコット・ゴーハム、ブライアン・ダウニーという顔ぶれを揃えた最終期のTHIN LIZZYラストアルバム。ジョンを入れたことで生まれたヘヴィ・サイドのタイトル曲#1「Thunder And Lightning」と彼の最高傑作リフ#5「Cold Sweat」、そして延々弾きまくるギターソロの名曲#7「Baby Please Don't Go」の泣かせ度は半端じゃない。ジョンとダーレンのギターvsキーボードバトルの凄まじい「Thunder And Lightning」#6「Someday She Is Going To Hit Back」、メロディアスな#4「The Holy War」#9「Heart Attack」など聴きどころ多数。
THIN LIZZY / DEDICATION 【85点】
THIN LIZZY / LIVE 【85点】
THRICE / THE ARTIST IN THE AMBULANCE 【90点】
カリフォルニア州出身のエモ・パンク・メタルバンドの、2枚のインディーズアルバムを経てのメジャーデビュー作。エモ・パンク、スクリーモ、メロディック・メタル・パンク…などいろいろなカテゴライズがされているようだが、そんな形容はむしろ邪魔だと思うぐらいロックを愛する全ての人に訴えかける素晴らしい音楽。METALLICAやIRON MAIDENなどを彷彿させるちょっと懐かしいメタルを思い出させながらも、パンキッシュに、モダンに疾走するサウンドは非常に新鮮。時にはメロディック・デスメタルっぽい鋭角的なリフが聴けたりと、意外な展開も心を躍らせる。シンプル&コンパクトなサウンドなのに、芳醇でエモーショナルでキャッチーなメロディによって壮大なドラマが生み出される。心憎いヤツらだ。#3「All That Left」、#5「Stare At The Sun」、#10「The Artist In The Amburance」、#12「Don't Tell And We Won't Ask」、#13「Eclipse」あたりがツボ。ヒーローになれるポテンシャルが充満したバンド。期待大!(H)
THRONE OF CHAOS / MENACE AND PRAYER 【80点】
THRONE OF CHAOS / PERVERTIGO 【82点/86点】
フィンランド産叙情デスメタルバンドの2nd。北欧メロディック・デスというジャンルが画一的であることは問題ではないのだが、その範疇の中でもTHRONE OF CHAOSのデビュー作はWITHOUT GRIEFのように好意的に接する存在にはなかなかなれなかった。本作ではその画一的ジャンルからの脱却を図ったのか、クリーンヴォイスを導入したり、音楽性にバリエーションをつけたりと様々な試みをしており、既にデビュー時の面影、即ちCHILDREN OF BODOMの影を感じる部分はほどんどなくなったといっていい。メロディック・デスにクリーン・ヴォイスを織り込むことは既にIN FLAMES、DARK TRANQUILLITY、SOILWORK、GARDENIANら先達が実践し、もはやオリジナルなイメージはなくなってしまったが、THRONE OF CHAOSの場合は時にキレイすぎるんじゃない?ってなぐらいモロ北欧メタルな声質もフィーチュアされ、また先達とはひと味違った印象になっていると思う。楽曲のバリエーションのアイデアは豊富だが、より洗練度が増せば「とってつけた」感じがなくなるかも。好意的というところまでは今一歩。(H)
前作「MENACE AND PRAYER」から2年ぶりのアルバム。一聴して「化けた」具合がわかるほど、強烈なアルバムに仕上がっている。前作はIN FLAMESあたりのコピーといわれるようなサウンドであったが、本作では琴線に触れるツインギターの音色がより力を増し、デス声ばかりでなくクリーンボイスを織り交ぜることによって曲調に緩急をもたせるといった、オリジナリティが前面に押し出されていることからも彼らの成長が伺え、文字通り「化けた」作品に仕上がっている。コピーバンドみたいないわれ方の前作に比べ、内容的にも曲全体に深みと様々な色合いが加わり、聴くたびに新たな発見があるように思える。本作の変貌振りは、今後のTHRONE OF CHAOSのあり方に大きな期待をもたせる作品といえよう。(K)
THUNDER / BACKSTREET SYMPHONY 【85点】
THUNDER / LAUGHING ON JUDGEMENT DAYS 【80点】
THUNDER / BEHIND CLOSED DOORS 【90点】
THUNDER / THRILL OF IT ALL 【87点】
THUNDER / JUST ANOTHER SUICIDE 【88点】
5th「GIVING THE GAME AWAY」の先行シングルで、アルバムが素晴らしいものになっているだろうと確信できるかのような魅力的なナンバーだ。アコースティックギターとピアノ、そしてベースが心地よく楽曲をリードしながら、ダニー・ボウズの渋さ全開のヴォーカルと、エレキギターが流麗に絡んでくる。前作「THE THRILL OF IT ALL」は、バラードはよかったものの、アップテンポの曲はイマイチの印象が拭えなかっただけに、この曲がアルバムの1曲目を飾るということは喜ばしい限り。#2はアルバム未収録のバラードで、これも哀愁たっぷりの佳曲。アルバムに入らないなんてもったいないくらいで、それらを差し置いてどんな凄い曲が!?と期待は更に高まるばかりだ。おふざけ#3はほとんど曲にもなっていないようなナンバーだが、聴いた瞬間思いっきり笑えた。これはTHUNDERだから面白いのであり、彼らのセンス・オブ・ユーモアが溢れている。(H)
THUNDER / GIVING THE GAME AWAY 【92点】
通算5作目。過去にいろいろなトラブルもあったTHUNDERだが、よい状態でメンバーのミュージシャンシップが発揮され、緻密に、繊細に仕上がった本作は過去最高の出来。名曲#1「Just Another Suicide」に引っ張られるように、2曲目以降も全編にわたって哀愁とフックに富んだメロディの洪水が押し寄せる。一体感が感じられるアルバム構成の中で、ヘヴィな曲やファンキーな曲も違和感なくおさまっていて、全てに自然体が生んだ力みのない余裕が感じられる。ソウルフルなダニーの歌唱を、ルークをはじめベン、ハリー、クリスのタイトなバックが彩る一体感は感動的で、円熟の極み。これぞブリティッシュ・ロックと体感できる名盤だ。(H)
THUNDER / SHOOTING AT THE SUN 【85点】
超名盤「GIVING THE GAME AWAY」の後の衝撃の解散劇、BOWES & MORLEYでの黄金コンビの復活を経て、期間限定でありがならも「THUNDER」名義でアルバムが出たことにまず感激。#1「Loser」のモロTHUNDER節のサウンドに一発ノックアウトで、その後もダニーのソウルフルな歌唱が堪能できる美しいバラードや、お得意のファンキー調だったりR&R調だったりするナンバー、あるいはBOWES & MORLEYっぽい都会的な曲もバランス良く配置してあって、THUNDERの歴史を綴ったような内容になっている。個人的には「GIVING THE GAME AWAY」路線が好みなのでトータル的にはこの点数になってしまうけれど、ダニーの情感豊かな声、ルークの眩しいギター、バックの堅実なプレイと、THUNDERの刻印がしっかり押されたサウンドは十二分に楽しめた。(H)
THUNDER / THE MAGNIFICENT SEVENTH 【87点】
ブリティッシュロックの最高峰バンドのひとつ、THUNDERの7thアルバム。前作「SHOOTING AT THE SUN」で見事に100%THUNDER印で復活してくれたわけだが、本作でもTHUNDERならではの英国臭プンプンの作品に仕上げてくれた。ロック度がいつもより幾分高めでそこに天才ヴォーカリスト、ダニー・ボウズの声が乗る。その声が空間に広がってできるリッチなロックワールドは至福のひととき。ルーク・モーリーの熱いギタープレイが光る#5「Amy's on The Run」、#7「Fade Into the Sun」といったら、かの名曲「River of Pain」を引き合いに出したくなるぐらい素晴らしい曲だ。なかには、使い回しのメロばっかりと思わせる曲もあって「GIVING THE GAME AWAY」にはまだまだ遠く及ばないが、この等身大の音楽が、いいのだ。(H)
THUNDER / ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE 【86点】
ブリティッシュ・ハードロックバンド、THUNDERの8作目。このバンドはスタンスやルーツが明確なのでどうしても使いまわしフレーズが多くなってしまい、ツカミでぐっとくることはないのでスタンダード音楽的に聞き流しながら楽しむことが多いのだが、気がつくとTHUNDERワールドにどっぷり浸かってしまう、というパターンが多い。今回、前作「Amy's on The Run」、「Fade Into the Sun」のようなキラーチューンが見あたらないので、「地味だなぁ、同じだなぁ」と思いながらも、気がつけば休日にゆっくり聴きたい音楽として常に流れている感じ。やはり普遍的なロックを身の丈スケールでやっているバンドは強い。相変わらずバラードが泣ける。(H)
THUNDERHEAD / CRIME 【55点】
TIM CHRISTENSEN / HONEYBURST 【82点】
元DIZZY MIZZ LIZZYのフロントマン、ティム・クリステンセンの2ndソロ。アコースティック主体のサウンドでアダルトな雰囲気を醸しだし、彼独特のアーティスティックな空間に一瞬にして引き込ませる、アーティストとしての風格に満ちた作品だ。DML時代から曲作りの巧さは定評があったが、ここでも#5「Whispering at The Top Of My Lungs」などでまさしく絶妙なソングライティングをみせつけている。全体的に素朴感を漂わせながら、実は奥ゆかしき味わいに溢れた個性的なアルバム。(H)
TMG / TMG I 【80点】
B'zの松本孝弘のソロ・プロジェクトだがメンツときたらエリック・マーティン、ジャック・ブレイズ、ブライアン・ティッシーという超豪華メンバーを引き連れてのバンド形式のプロジェクトだ。アルバムタイトルに「1」とつけるぐらいだから、今後も引き続き継続していく意欲も伺われる。洋楽大好き!な松本の趣味(バンド名とか特に)が全編に散りばめられ、そこに意識的に和のテイストを注入している点が新鮮。しかし、メンツのせいかわからないが「情緒」を感じるまでは至らず。楽曲もシングル意外はこれといってズバ抜けた曲も見あたらないのが残念だった。どうせこのメンツでいくなら、エリックやジャックにも曲を書かせてみたら面白いかも。あとこれは勝手な独り言だが、ジャック・ブレイズ大好きなので、彼にも歌ってほしかったり。(H)
TNT / TELL NO TALES 【87点】
TNT / INTUITION 【89点】
TNT / REALISED FANTASIES【90点】
世間では「アメリカナイズドされた」と酷評もあったアルバムだが、僕はこれが一番好き。TNT自体、このアルバムが最初に聴いたものだから、捉え方がまた違うだろう。確かに過去のアルバムの路線からすると北欧ならではの美しさはないが、楽曲の良さは光っている。ロニーのヘヴィなエッジのギターが唸る「Downhill Racer」、メロディのフックが堪らない「Hard to Say Goodbye」、美しいメロディの「Lionheart」「Rain」、そしてラストを飾る勇壮な「Indian Summer」と、要所にハイライトを置いた構成が見事。(H)
TNT / THREE NIGHTS IN TOKYO 【79点】
TNT / BEST 【88点】
TNT / FIREFLY 【80点】
TNT / TASTE 【77点】
「TRANSISTOR」以来の6曲入りミニアルバム。まだまだ「本気のTNT」というレベルではないが、往年の雰囲気もかなり復活しつつあるので、フルアルバムにむけて期待できる内容。(H)
TNT / MY RELIGION 【82点】
先行EP「TASTE」を挟んでの久々のフルレンスアルバム。近年のモダンな雰囲気も残しつつ往年の美意識を復活させようとする姿勢はベストな選択か。「REALIZED FANTASIES」がTNTのきっかけでいまだにこのアルバムこそ最高傑作であると考えている自分にとってはトニー・ハーネル(Vo)とロニー・ル・テクロ(G)という二人の超個性的なプレイヤーが作り出す音は、煌びやかな北欧風だろうがモダンロックだろうがまぎれもなくTNTであるので、いい曲を書いてくれるかどうかが自分としての判断基準。#1「Lonely Night」なんかはそれを軽くクリアする佳曲だし(ただし尻切れトンボのアウトロは納得いかない)、アルバム全体を見渡しても往年のスタイルを求めるTNTファンならば満足を得られる内容のはず。ま、もっといい曲が書けるバンドだ、との思いからやや消化不良なところもあるけれども、気持ちとしてはこの作品での姿勢は嬉しいものです。(H)
TO/DIE/FOR / ALL ETERNITY 【82点】
フィンランド出身の新鋭耽美系ロックバンド。ゴシック風味の重厚なサウンドにR&R調のキャッチーなメロと雄々しく男臭くちょっと気怠いヴォーカルがのるサウンドは新鮮だ。音作りもしっかりしているしメロディのポップなキャッチーさ加減が絶妙。「Together Complete」のような様式美もそつなくこなす器用さとアイデアの豊富さは魅力的だ。この路線を崩さずいけば新たなジャンルとしてシーンに台頭するに違いない。ゲストに同郷のアレキシ・ライホやキンバリー・ゴスも参加。「In The Heat Of The Night」の女性ヴォーカル、LULLACRYのタンヤ嬢のキュートでセクシーな声はむちゃくちゃ美しい。絶品。(H)
TO/DIE/FOR / EPILOGUE 【82点】
#3「Hollow Heart」(ゲストVoのLULLACRYのタンヤ嬢が相変わらずいい!)は心地よいビートと憂いのサビメロが間違いなく失禁へと導く2001年私的ベストチューン!アルバム自体も前作に比べてもキャッチーな曲が多くなり、ロックの持つ普遍性を男臭く妖しげなヴォーカルで包み込んだTO/DIE/FORワールドを上手く表現した仕上がりとなっている。まだまだ曲作りの詰めが甘いのが惜しいところで、「Hollow Heart」級の曲がもう2、3曲あってほしかった。(H)
TO/DIE/FOR / JADED 【84点】
ゴシック世界をメロディアスに、ハードに表現するフィンランドの超個性派ゴシックロックバンド、TO/DIE/FORの3rdアルバム。前作まではアルバム中2、3曲はものすごく良くてそれ以外はイマイチ…な印象が強かったが、今回ではソングライティング面で飛躍的にレベルアップしていてバランスが断然良くなった。「Together Complete」や「Hollow Heart」級の名曲が見あたらないのは少々残念だが、#1「Dying Embers」のイントロの一音で一瞬にしてTO/DIE/FORワールドに引きずり込まれるように全体的な吸引力は威力を増しており、ジェイプ・ペラタロ(vo)が放つロマン溢れる妖しげな声はより魅力的な耽美世界を作り出している。これで悶絶キラーチューンがあったら言うことなし。(H)
TO/DIE/FOR / IV 【90点】
フィンランド産ゴシックメタルバンドとして確実にキャリアを積んできたTO/DIE/FORだが、本作では大幅なメンバーチェンジを敢行。しかし、看板であるJapeさえいればこのバンドが成り立つという構図がはっきり出ており、メンバーチェンジの影響はさほど感じられない。Japeの妖艶な声を引き立てる各パートの仕事ぶりは十分だし、過去のアルバムに比べて楽曲のクオリティがまんべんなく全体に浸透していて、個人的には過去最高の満足度。#1「Autumn Forever」、#2「This World Is Made For Me(ギターソロが絶品)」#6「Little Deaths」、#8「Fragmented」、#9「Endlessly」などなど、琴線に触れまくるメランコリックなメロディはまさにこのバンドにしかできない魅力である。(H)
TO/DIE/FOR / WOUNDS WIDE OPEN 【95点】
フィンランド産ゴシックメタルバンド・TO/DIE/FORの5作目。初期のころは「Together Complete」、「Hollow Heart」といった単発キラーチューンがアルバムに一曲入っているという印象で、どうもアルバム単位ではイマイチ感が拭えなかったが、前作「IV」で大化けして個人的には数あるゴシックメタルバンドの中でも特にお気に入りのバンドに。本作でそれが完全に確立した。コンパクトかつキャッチーな構築美がどの曲にも満載。くどすぎないシンフォニックな味付けとデジタル風味のバランスもいいし、官能的なギターソロもさらに磨きがかかってる。前半のコマーシャルな路線もいいが、#5、#6あたりの、リードギターがバックグラウンドで歌うように追いかける展開が堪らない。OZZY OSBOURNEの「(I Just) Want You」のカバーもGoodだ。個人的にゴシックメタルの最高峰と位置づけさせていただく。{H)
TONTO TONTO / MIRROR FOR THE BRAVE 【66点】
TONY MACALPINE / MAXIMUM SECURITY 【90点】
クラシカル技巧派ギタリスト、トニー・マカパインの2nd。トニーはベースとキーボードも担当、ドラムはディーン・カストロノヴォ、アトマ・アナー。「Autumn Loads」「Hundreds Of Thousands」「Tears Of Sahara」「Key To The City」「The King's Cup」等々、スリリングなプレイと泣き所をついた様式美メロディが洪水のごとく押し寄せる。まるで叙情的なヴォーカリストが歌っているのかと錯覚するほど「歌っている」ギターがスゴイ。本作には「Tears Of Sahara」と「Vision」でジョージ・リンチが、「King's Cup」でジェフ・ワトソンがゲストで参加。インストアルバムの決定盤。
TOTO / BEST 【80点】
TOUR DE FORCE / WORLD ON FIRE 【84点】
TREAT / SURVIVOR 【82点】
TREAT / ORGANIZED CRIME 【83点】
TREAT / TREAT 【89点】
ヴォーカルに元SWEDISH EROTICAのマッツ・レヴィンを迎え、これまでの北欧キラキラ路線から一転、骨太のヘヴィ・ロックに音楽性の変貌を遂げた作品。前作は一般的に名作といわれているが、個人的にはヴォーカルの弱さが気になり、そういう意味でこの路線変更は肯定派。その音はまさしくマッツにぴったりのサウンドで、グイグイうねるギターサウンドと荒々しいヴォーカリストは男気たっぷりのガッツィーな仕上がり。ハード・ドライヴィンなナンバーもいいが、バラード「Justice」や「Learn To Fly」のしっとりした曲もまた絶品。(H)
TRIBE OF GYPSIES / NOTHING LAST FOREVER 【83点】
TRIUMPH / BEST 【87点】
TRIVIUM / ASCENDANCY 【85点】
フロリダ産メタル・ハードコアバンドの2ndアルバム。VoとG兼任のフロントマン・マット・ヒーフィーは日系人。崇拝するプレイヤーはIN FLAMESのイエスパー・ストロムブラード&ビヨーン・イエロッテ、そしてARCH ENEMYのマイケル・アモットというだけあって、間違いなく北欧メロディック・デスが根底に流れていて、メロディックなツインリードやキレのあるリフが非常に心地よい。ヴォーカルもスクリームとクリーンを巧みに使いこなす現代的なスタイル。KILLSWITCH ENGAGEが好きなら間違いなく買い。まだ19歳のマット。今後ももしかしたらものすごい作品を産み落としそうなポテンシャルを感じさせる。
TRIXTER / TRIXTER 【82点】
TRIXTER / HEAR 【80点】
TWILIGHTNING / DELIRIUM VEIL 【88点】
フィンランド産メロディックパワーメタルバンドのデビュー作。ツインGとKeyを含む6人組。ミキシングはSTRATOVARIUSのティモ・トルキ。古き佳き時代の北欧メタルムーヴメントの美意識を継承する美しいメロディ、キーボードによる壮麗なキラキラ感、テクニカルでツボを押さえたツインリードによる強力な美旋律がなんとも魅力的。メロディやアレンジに一工夫加えたものが多く、古臭さの中にも新鮮な輝きがあるところに好感がもてる。ハイトーンが冴えまくるヴォーカルは伸びもパワーも申し分ない実力者だ。サビメロが強力な#1「Gone To The Wall」、#5「Return To Innocence」、EUROPEの「The Final Countdown」風味の#2「At The Force」、キーボードの装飾が秀逸な#10「The Escapist」等々、どの曲にもキャッチーなメロディが満載の逸品。北欧美旋律が好きなリスナーには堪らない作品ではないだろうか。どうでもいいけど、見慣れない単語がたくさんあるなぁ…。(H)
TWILIGHTNING / PLAGUE-HOUSE PUPPET SHOW 【89点】
フィンランドから新星のごとく現れ、80年代HMを彷彿させる良質メロディックHMで多くのファンを獲得、いきなり来日まで果たしてしまったTWILIGHTNING注目の2ndアルバム。フックのあるキャッチーなメロディに、ほどよくクサ味をまぶしたメインストリーム系のサウンドは、安心感の中にも高い満足感も与えてくれるクオリティ。スピードやパワーに頼り切らなくとも魅力が出せるのが強み。前作のほうがインパクトがあったかもしれないが、今回は全体を通して非常にバランスがよく、成長の跡が伺える。2枚目のジンクスは全くなし。このままの路線を保って来日も続けてくれれば日本での地位は間違いなく確立されそう。(H)
TWINZER / OH SHINY DAYS 【85点】
TWINZER / STRANGE BLUE 【79点】
3rdアルバム。ハードロックと歌謡曲のどっちつかずというナンバーが多く、中途半端な印象をもってしまう。洋楽ファンにはちょっと期待はずれの内容。ギターの音もイマイチだし。ただし、終盤の「I'm Looking For Loving」(この曲はシングルバージョンの方が良い)とLED ZEPPELINの「Rock And Roll」で前半のもたつきをカバーしている。「Rock And Roll」は本家が聴いたら真っ青になるであろう絶品のヴォーカルが堪能できる。このアルバムで分かったのは、生沢は、シャウト系のハードなナンバーでこそ威力を発揮するのであり、おとなしい曲調ではいささか凡庸になってしまうということだ(もちろん上手いのは確かだが)。TWINZERとしてのプロジェクトの方向性に疑問を持ってしまった作品。(H)
TWINZER / PRAYER 【82点】
ハードなギターのエッジを主軸とし、ヴォーカルもそれに併せて張りのある唱法を全般に披露する、より骨太のハードロック。日本の歌謡ロックやジャパメタとは完全に一線を画した音楽性は、彼らが影響されたであろうブリティッシュ系のブルージーなスタイルが強調されており、特に名曲#8「Extacy」はジョン・サイクス在籍時のWHITESNAKEを彷彿とさせて嬉しい。(H)
TWINZER / FIFTH HARD CORE 【80点】
今作も伝統的なハードロックの匂いがぷんぷんする仕上がりにはなっている。WHITESNAKEの「Is This Love」そっくりの#3「Alone Again」は彼らの全ての楽曲の中でベスト3には入る感動のバラードだ。「Is This Love」は導入部におけるカヴァデールの低音の歌唱が絶品なのだが、こっちは後半にいくにつれ劇的さが増していて絶品度は倍増だ。最後のコーラスにギターの早弾きが連なるところはもう涙が出そう。(H)
TWINZER / SHE'S IN LOVE 【85点】
非常にエモーショナルなギターとヴォーカルが楽しめる。肩に力を入れずリラックスしながらも、彼のヴォーカルの上手さがひしひしと伝わってくる佳曲だ。こういったラフな感じに流すヴォーカルはピッタリ。ちょっと長いリミックスバージョン#3では#1とは趣の異なるアレンジが緻密に施された仕上がりになっていて、こっちも素晴らしい。(H)