Music : お気に入りアルバム

DARE / CALM BEFORE THE STORM 【99点】

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前作のHR路線から一転、1stに通じるAOR寄りのサウンドに戻った作品。静かに佇むケルティックの薫りの上に珠玉の叙情メロディとギターのフレーズが心に染み込んでくる感動の宝庫だ。ダーレンの囁くようなヴォーカルと、静かながらも激しく熱く感情を揺さぶる官能的なギターのメロディは、いつしか体内温度を上昇させる。2nd「BLOOD FROM STONE」のアウトテイクのリメイク#1「Walk On Water」は本作の「薫り」を決定づける、ドラマティックで大らかなケルト調の名曲。テンポをつけた軽快さと歯切れの良いギタープレイが素晴らしい#2「Someday」、感動的なドラマが浮かび上がる大作バラード#3「Calm Before The Storm」、コーラスでの盛り上がりが絶品な個人的ハイライト#4「Ashes」、アコースティックギターを中心に叙情性を撒き散らす#5「Crown Of Thorns」、ダーレンの狂おしいヴォーカルが背筋を凍らせるバラード#6「Silence Of Your Head」、アンドリュー・ムーアの情感豊かな泣きのギター・プレイが光る#7「Rising Sun」#8「Rescue Me」(「Rising Sun」のソロは個人的に好きなギターソロNo.1)、同じくアンディのオカズプレイが映える激渋チューン#10「Deliverlance」、THIN LIZZYの名曲カバー#9「Still In Love With You」、キャッチーなメロディで締めくくる#11「Run To Me」と最初から最後までズラリ揃った名曲に脱帽。全編を流れる同じ空気感もアルバムとしての統一感を高めている。じっくり心を震わす超名盤。楽曲の質も、ダーレンの声も、アンディのギターも、現時点でハラヒロシが出会った最高のアルバム。

IN FLAMES / COME CLARITY 【98点】

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常に意欲的な作品を作りつづけ、決して現状に留まらず進化を繰り返す北欧エクストリームメタルの帝王・IN FLAMESの通算8作目。前作・前々作で積み上げてきたモダンな作風に、「Colony」や「Clayman」時代の直球メロディックデスメタルをうまくブレンドしたことにより、よりIN FLAMESらしく・より世界のマーケットに、というベクトルを提示した作品だ。そういった路線であれば前2作で控えめだったメロディアスなツインギターのハーモニーの量が増えるのも当然で、スピード感あふれるメロデスの畳かけを聴いて、IN FLAMESはやっぱこれだよな、と思うファンは多いだろう。特に中盤から終盤にかけての展開は凄まじい(同じテンションの曲が続くためやや単調に感じるところだけ若干惜しいなと感じるが、それぞれの曲のクオリティは異常に高い)。個人的には、前2作で切り開いた新境地のミドルテンポの麻薬的名曲「Reroute to Remain」、「Cloud Connected」、「The Quiet Place」、「My Sweet Shadow」系の曲が1曲でもガツンと入ってきていたら文句なしにIN FLAMES過去最高!と叫んでいただろう。強烈なブルタリティと印象的なサビを持つ新たな名曲#1「Take This Life」、SOLIWORK系のモダン・エクストリーム系の#2「Leeches」、絶頂感満載の疾走リフと女性ヴォーカルをフィーチュアした、アルバムの中でも一際目立つ#4「Dead End」、アンダース・フリーデンの魂の歌声と噎び泣くギターソロが絶品な名バラード#6「Come Clarity」等等等、またもや彼らの代表曲になりそうなチューンもたっぷり。個人的には「Reroute〜」と肩を並べるかどうか、というところ。先頃リリースされたライブDVDを見て興奮したファンは世界中にいるだろうし、積極的なライブ活動で北米進出も著しいIN FLAMES、いよいよ今年こそ大ブレイクか!?(H)

IN FLAMES / REROUTE TO REMAIN 【98点】

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「メロディック・デスメタルの帝王」とは、所詮世界のとある一地域としてのアイデンティティだったかもしれないが、このアルバムでいよいよワールドワイドな地位を掴み取る予感が漂っている。様々なチャンスを確実にモノにしていく中で世界というビジョンが現実となり、そこへギラリと眼光が向けられた本作は相応の進化を経ている。全編にモダン・ヘヴィネスのエッセンスが散りばめられているが、どの曲にもIN FLAMES印が刻印されていることはまず言及すべきところだ。新生IN FLAMESの方向性と魅力を全て凝縮したオープニングのタイトルトラック#1「Reroute To Remain」はヘヴィなリフ、メロディアスなリードギターとノーマル声コーラスがフィーチュアされた名曲。ファストなリフと緩急をつけたメロディラインが特徴の#2「System」、#4「Trigger」、#10「Dismiss The Cynics」、勢いで押すモダンアレンジの#3「Drifter」、#6「Transparent」、ズシリと重い骨太のうねりが響く#5「Cloud Connected」、IN FLAMESらしさの中に新鮮なアレンジを取り入れた#7「Dawn Of A New Day」、#8「Egonomic」、#9「Minus」、#12「Dark Signs」、ミドルテンポでサビメロが印象的な#11「Free Fall」、#14「Black & White」、全てノーマル声のアコースティックなスローナンバー#13「Metaphor」と、豊富なバラエティで彩りながら決してらしさを失わないところに、冒険心と冷静さを兼ね備えた彼らの知性が浮かび上がってくる。モダンなメロディを持つヴォーカルについては若干の戸惑いがあるものの、ヘヴィ・メタリックな数々の名リフが生み出すヘヴィネス・アレンジの妙はこれまで以上で、興奮を喚起する要素はアルバム中に充満し、最大限の燃焼を起こしている。文句なしの名盤。

IN FLAMES / A SENSE OF PURPOSE 【98点】

coverフレドリック・ノルドストロームのスタジオを買い取った、バンド所有のスタジオ「IF STUDIO」としてじっくり制作された通算9枚目のフルアルバム。
全体的な感想としては、メロディアス度が高い、ギターソロがいつもより多い、ゴリゴリとへヴィに押し切るのではなく空間に広がりがある、適度なデジタル風味が音に厚みを与え、深みを感じさせる、緩急(テンポ)の使い分け・アレンジの妙が冴えてる…といったところ。アプローチは多彩なのに、IN FLAMESという看板がはっきり見えるところがさすが。スピード感のある曲はわりと似たタイプが多いので、何度も聞き込む必要はある…というよりは、個人的にはストレートなHMチューンはここ数作平凡に感じてしまうところがあって、特に前作「COME CLARITY」の終盤もそうだったんだけど、ちょっとアクセントのある曲が挟まってもよかったかな。

このバンドの良さはなんといってもスルメのように噛めば噛むほど味がでるところ。1度や2度じゃ良さはわからないけど、聞き込めば好きになりそうと思わせる可能性を感じさせてくれるのがいい。
IN FLAMESはアルバムごとに進化していくことがバンドとしての目標であるし、単純に過去のアルバムと相対的に比べて評価するのは難しいですが、個人的には過去のアルバムはどれも傑作だし、今回“も”傑作です、と言い切れます。

1.The Mirror's Truth
イントロではIN FLAMESらしくないちょっと軽めな雰囲気でスタートするけど、すかさず歯切れのよいリフとアンダース・フリーデンのシャウトが炸裂。へヴィすぎないマイルドさのあるギター、サビでのヴォーカルハーモニーとバッキングのハーモニーが抜群のメロディ、そして即効性と持続性の両方を兼ね備えた深遠さを感じるリーダートラックとしては文句なしの名曲。新作を象徴するかのような1曲です。

2.Disconnected
ザクザクと疾走していく序盤ではヘドバン必至。曲中でテンポがいろいろ変わっていて、ブリッジ〜サビにかけて表情が緩やかに変わっていくメロディが抜群。

3.Sleepless Again
初期IN FLAMESを思わせるアコースティックギターからはじまり、すかさず攻撃的疾走リフに。これまたブリッジ〜サビでの抑揚とメロディのバランスやキーボードのアレンジが秀逸。決して技巧に走らないメロディアスなギターソロもいいです。

4.Alias
ミドルテンポで、じっくりとメロディを紡いでいくといういままでになかったタイプの曲。サビでのコーラスハーモニーが特徴。これもギターソロにアコースティックギターを取り入れていて、IN FLAMES的モダン&クラシックがうまく同居してます。

5.I'm the Highway
印象的なメロディのギターリフが耳に残る。サビもかなりメロディアスで、歌重視度高い。

6.Delight and Angers
クラシックなHMを思わせるザクザクっとしたリフで始まる正統派な曲。思わず縦ノリしたくなります。ライブ向きかも。サビの手前のIN FLAMESらしいギターの音が気持ちよい。

7.Move Through Me
SOILWORKっぽいフューチャリスティックなアプローチのサウンドを軸にメロディアスで力強いヴォーカルが心地よいモダンな曲。ギターソロもスピーディーでキレがある。

8.The Chosen Pessimist
8分を超える大作。淡々としたイントロからはじまって、どうなるんだこの曲は!?と思わせながらいつのまにかドラマティックな展開になって、唐突な終わり方をするという、IN FLAMESになかった新機軸となる曲。感動的。唐突な終わり方がかえって余韻をずっと引きずります。アンダース・フリーデンの表現力が素晴らしいです。

9.Sober and Irrelevant
力強く、メロディックに疾走するメタルチューン。ここからは「COME CLARITY」の終盤同様、グイグイと引っ張る曲が続きます。

10.Condemned
グルーブ感あふれるへヴィな普遍的HM曲。サビのメロディはみんなで歌いたくなる勇壮さ、キャッチーさがあります。

11.Drenched In Fear
IN FLAMESらしい煽情力あるHM曲。これもブリッジ〜サビは合唱したい。随所にテクニカルなギターソロやアレンジがちりばめられてます。

12.March To The Shore
容赦なく突っ走る疾走曲…と思いきやこれもメリハリをつけてサビでじっくりハーモニーを聴かせるなど、アレンジ力が光る曲。

13.Eraser
「The Mirror's Truth」EPのカップリング曲ですが、同曲に負けず劣らずのフューチャリスティックな浮遊感と抜群なメロディをもつ名曲。リフもサビもソロも全て完璧。

14.Tilt
ちょっと地味だけどIN FLAMESらしさが随所に出ているミドルテンポの曲。アンダース・フリーデンの振り絞るヴォーカルがよい。ソロでのツインギターのハーモニーが叙情的。

DREAM THEATER / IMAGES AND WORDS 【97点】

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芸術性と商業性が見事に一体化したプログレッシブ・ハードの名盤。こういうアルバムこそ真に評価されて然るべき作品だ。高次元のテクニックとレベルに、自己満足に終わらないある種分かり易さも同居した作風で(「曲」を「images」と表現するあたり)、耳に入ってくる音だけで凄いことやってるな、と思うと同時に曲の良さも加わって鳥肌も立つ。どんなに優れた音楽理論をもっていても、それを表現できるセンスと技術がなければここまで聴き手を感動させることはできないだろう。完璧な理論とテクニックを持った天才が集い、それぞれが化学反応を起こして爆発させた結果生まれた世紀の名盤。

DARE / BENEATH THE SHINING WATER 【97点】

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「BELIEF」以来約3年ぶりとなる、筆者最愛のバンドの5th。前作のようなケルト風サウンドは控え目で、位置づけとしては「CALM BEFORE THE STORM」に近いところにあるいった印象。どの曲も似たような雰囲気とテンポなので、聴く人によっては退屈なアルバムかもしれないが、僕自身はこのバンドに変化など全く望んでいないし、下手にチャレンジ精神見せました的な楽曲を入れてアルバムの雰囲気を変えてしまうよりはずっと良い。
楽曲面ではダーレン・ワートンのソングライティングは相変わらず神レベルで冴え渡り、しっとりとした情景を描きながら気分良く最後まで聴かせてくれる。曲に身を任せていると心が浄化されていく気分になるのはこのバンドならではの独特の空気感だ。モイスチャーのかかったイントロで始まるオープニングトラック#1「Sea of Rose」はDAREのあらゆる魅力を詰め込んだ曲だし、タイトルトラックの#4「Beneath The Shining Water」は涙腺をビンビン刺激する、DARE史上でも「King Of Spades」、「Calm Before The Storm」、「Ashes」、「We Were Friend」等と並ぶ最高レベルのバラード。ダーレンの情感たっぷりのハスキーヴォイスに感動的なサビ。マジたまらん。非常にキャッチーなコーラスをもつ#2「Days Gone By」、#7「I'll Be the Wind」やU2っぽい#5「The Battle That You've Won」あたりも素晴らしい。楽曲レベル・メロディの質は前2作に全く遜色なく大満足だが、そうなるとやはりポイントとなるのは前作その量が激減したアンドリュー・ムーアのGパート。DAREが単なるAORバンドでもソフトロックバンドでもないのは、アンディの奏でる熱くエモーショナルなギタープレイによって聴く者の体温を上昇させてくれるからだ。#1「Sea of Rose」のラスト、ブレイクのあとで官能的なソロを披露するなど、前作よりは量的に増えている感じで非常に嬉しいところである。質はもちろん◎。
総合的にみると、やはりギターのフィーチュア度で「CALM〜」並にならないかぎり、どんなに楽曲がよくても僕の中で「CALM〜」を超えることはあり得ないが、文句無しにマスターピース決定の名盤である。

DARE / BELIEF 【97点】

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最高傑作だった3rd「CALM BEFORE THE STORM」を超えるアルバムは出ないとおもっていたと同時に、もしあるとしたらDARE自身に、と本気で思っていたが、「BELIEF」はまさに前作と比肩しうる完成度だ。汚れ無き朝夕の太陽と澄み切った空が反応して美しい色を作り出すような情景のよう。大気を覆うように染め上げられるグラデーションがあらゆる雑念を取り払ってくれる。全体的に前作よりさらにソフトになり、ピアノやケルト風のサウンドが大々的にフィーチュアされ、逆に前作で全編で大活躍だったアンディのギター・プレイは控えめ。「CALM〜」では聞き流してしまいそうな雰囲気の中アンディのギターで補っていた部分があったが、本作はメロディの質そのものが格段に上がっていて、フックに富んだ曲も多い。ささやくように、優しく包み込むダーレンのヴォーカルはますます曲のイメージにフィットし、出番が少ないとはいえしっかりとらしいフレーズを連発するアンディのプレイも素晴らしい。#1「Silent Thunder」や#6「We Were Friends」などは究極の域。じんわりと染み込んでいく感覚。静かで大らかなドラマが詰め込まれている名作。

TEN / SPELLBOUND 【96点】

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TENの美味しいとこどりの最高傑作。センス抜群のアプローチとワンランク上にあがった表現力から生まれる充実度、さらには冗長で貧弱なプロダクション等の弱かった部分が改善された隙のないアルバムだ。ひたすらメロディに拘る楽曲の質量は文句なく、今回も今まで以上に練られた構成・展開が心を揺さぶる。映画のサントラかと思わせる劇的なオープニング#1から続く#2「Fear The Force」はTENの中で最高のドラマティックな曲。WHITESNAKE風の#4「Spellbound」、否応にもゲイリームーアの「Over The Hills And Far Away」を彷彿とさせる#7「Red」を含むケルティックナンバー3曲、TENらしい哀愁の上にヴィニーの狂おしいギタープレイが堪能できる#8「The Archemist」#10「Ecripse」、そしてお得意のバラード#9「Wonderland」#12「Till The End Of Time」と、洪水のように押し寄せる珠玉のメロディの数々にただただ飲み込まれるのみ。単一楽曲をコンパクトにし、密度の濃い中でドラマを炸裂させる方法論は見事。ヴィニーのプレイはより光っている。一生手放せないアルバムだ。

BON JOVI / KEEP THE FAITH 【92点】

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トップバンドならではのハードスケジュールとプレッシャーからいつしか解散の噂まで浮上してきた彼らだが、そんな中「Keep The Faith」という魂のこめられたタイトルとアートワークでで改めてメンバーの絆の強さを示した5th。これまでの若さとエネルギーを前面に出した雰囲気とは異なった、クールな佇まいで登場している。強靱な精神世界を示したダイナミズム溢れる#1「I Believe」〜#2「Keep The Faith」、自らの過去を皮肉混じりにうたう歌詞が大変興味深いアップテンポの#3「I'll Sleep When I'm Dead」、瑞々しいフックに溢れた、BON JOVIが生み出した珠玉のアメリカンロック#4「In These Arms」、感動的なバラード#5「Bed Of Roses」、#10「I Want You」、初の大作#6「Dry County」などバラエティ豊富な一枚。全体的にはバラツキもあるが、溢れんばかりのロックに対する精神性が強く現れた力強いアルバムだ。個人的には、甘酸っぱく擽ったい感情が目一杯詰まっている思い入れの強い作品。



ARCH ENEMY / BURNING BRIDGES 【94点】

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デスメタルの暴虐性と叙情的な美しいメロディが高い次元で融合した名盤。攻撃的な展開に終始まとわりつく扇情力溢れるメロディが頭を洗脳していく。ギター・パートにはいずれも官能美が強烈に発散され、バランスとメリハリが曲の中で化合している。#1「The Immortal」からしてその激性は頂点に達し、コーラスに連なるギターリフの泣き具合は半端ではない。#2「Dead Inside」、#6「Seed Of Hate」は古典的ヘヴィメタルのリフが魅力、#3「Pilglims」や#4「Silverwing」でも強烈な泣きが生命力を生み出している。タイプの違う二人のギタリストがお互いのルーツをうまく融合しながら究極のプレイを披露し、リズム隊のズシリとした安定感とともに張りつめた緊張感を伝える凄味に満ちたアルバムだ。

ARCH ENEMY / WAGES OF SIN 【94点】

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女性ヴォーカリスト加入という衝撃的なメンバーチェンジを経て制作された、バンドにとっても転機となる注目の4th。期待と不安が入り交じる中ベールを脱いだ新加入のアンジェラ・ゴソウは、そんな不安を木っ端微塵にうち砕く、想像を遙かに上回るとんでもない咆哮の持ち主だった。獰猛な野獣というべく攻撃的で威圧感のある声が、ARCH ENEMYのブルータルな音楽性を極限まで高めていると言えるだろう。サウンド面・楽曲面では一聴して前作のようなインパクトは感じないものの、リフに多様性が増し、ブ厚いプロダクションとよく練られたアレンジにのるブルータルなアグレッションがそこかしこに散りばめられている。官能美と疾走感がミックスされた#1「Enemy Within」、#2「Burning Angel」、#4「Ravenous」、#11「Shadows And Dust」や、重厚なリズムの#3「Heart Of Darkness」、#6「Dead Bury Their Dead 」など、基本的にはストレートながらも細部の音像にこだわったサウンドは、何度も聴いていいと思えるタイプの曲が多い。新たな出発に相応しい名盤。ライブも凄かった。

BAD HABIT / REVOLUTION 【91点】

甘美で煌びやかなキラキラ感満載のサウンドで80年代メインストリーム型北欧ハードポップを体現するスウェーデンの5人組の2ndアルバム。メロディの質量が共に極めて豊富で、どんなタイプの曲でもまず印象的なメロディが心を刻む。ヴォーカルは高音域で少々不安定になるものの、この手の音楽にそつなくおさまるタイプのシンガーだ。#9「Another Night」、#10「High On You」といった秒殺ハードポップをはじめ、バラードも挙げればキリがないほど全てが魅力的な名曲ばかり。エッジの立ったギターやキーボードの装飾も前作より効果的で、メロディアスハードロックの理想型のサウンドだ。

BAD HABIT / ADULT ORIENTATION 【92点】

スウェーデン出身のメロディックロックバンドの3rd。前2作はハードな曲とバラードがバランス良く配置されたアルバムだったが、今回はハードな部分がかなり削がれたAOR作品に仕上がった。ギターパートすらない曲もあり、ロックという範疇には収まりきらない間口の広いサウンド。全体的には爽快感ただよう自然体の作風が心地よさを誘う。春のうららかな陽気によくマッチし、蒸し暑い夏の清涼剤になり、もの悲しい秋には元気をくれ、寒い冬には心を暖めてくれる。最高のポップ・アルバムだ。

BLACK SABBATH / TYR 【91点】

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1990年発表の通算17作目のアルバム。メンバーはトニー・マーティン、トニー・アイオミ、ニール・マーレイ、コージー・パウエル。ギリシャ神話を用いたコンセプト・アルバム的要素を含み、一貫してスケールの大きさが表現された懐の深いドラマティックなサウンド。厳かな#1「Anno Mundi」、#3「Jerusalem」、#4「The Sabbath Stones」、疾走曲#2「The Law Maker」、組曲となる#5「The Battle of TYR」、#6「Odin's Court」、からそれに続く壮大な#7「Valhalla」、コマーシャルだが哀愁たっぷりのバラード#8「Feels Good to Me」、各インストパートが軽快で芯の通った#9「Heaven In Black」と、捨て曲は全くない。

BLUE MURDER / BLUE MURDER 【94点】

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僕をブリティッシュ・ハードロックに引き込んだ名作。聴きこむほどに細部が見えてくる独特の英国臭は、アメリカのメジャーキーにはない良さがあることを教えてくれた。空間的に広がりのあるサウンド、ジョンの太いチョーキングの音と迫力のヴォーカル、トニーとカーマインの怒濤のリズム隊が織りなす音が僕を絶句させた。#1「Riot」#2「Sex Child」#9「Black Hearted Woman」はWHITESNAKEの潮流であり、WHITESNAKEの成功はジョンの力によるものが大きいということが明確に分かる。そのダイナミックさはこちらの方が上だ。絶唱するパワーバラード#6「Out Of Love」の言語に絶する美しさと力強さ、#7「Billy」の軽快なギター・ワークとメロディのフックが特にお気に入り。

BLUE MURDER / NOTHING BUT TROUBLE 【91点】

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トニー・フランクリン、カーマイン・アピスに代わりマルコ・メンドーサ、トミー・オースティンが、またニック・グリーン(key)、ケリー・キーリング(Vo)を加入させて発表した2nd(ただしメンバーは収録がほぼ終わった状態に行われたため、ほとんどが前作のラインナップで制作された)。前作の分厚い音像に比べるとかなりシャープでシンプルになって、各楽器の音がクリアに聞こえる。楽曲も速い曲からミディアム、スローナンバーとバランス良く配置されていて、それぞれにジョンの持ち味が発揮された一枚である。THIN LIZZY、WHITESNAKEと渡り歩いたジョンの才能を結集したようなアルバムだ。サイレンとともにヘヴィでシャープなリフが興奮を極限まで高めるHMの超名曲「We All Fall Down」でノックアウトされた人は多いだろう。ジョンの歌唱力も表現に幅が出て、様々なタイプの曲を器用に情感たっぷりに歌い上げる様は堂に入っている。「Runaway」「Save My Love」「I Need An Angel」そしてケリー・キーリングがリードヴォーカルを執る「I'm On Fire」等、名曲多数。

BOB CATLEY / THE TOWER 【91点】

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TENのゲイリー・ヒューズをソングライター/プロデューサーに迎えて作られたMAGNUMのヴォーカリスト、ボブ・カトレイのソロアルバム。英国ロックを代表するふたりが作り出したサウンドは、当然のごとく極上の英国HRを生み出している。ゲイリー・ヒューズ独特のメロディラインはTENで披露している雄大で叙情的な深みのあるHR路線で、ボブのヴォーカルにも見事にハマっており、二人の絶妙な波長とコンビネーションが曲の良さを更に引き上げている。特に#1「Dreams」、#2「Scream」、#3「Far Away」のたてつづけに襲いかかる哀愁バリバリの展開には失禁せずにはいられない。珠玉の名曲の宝庫。

BOB CATLEY / LEGENDS 【91点】

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前作「THE TOWER」はTENと酷似したサウンドだったが、本作ではゲイリーがボブの声や雰囲気にあわせて曲づくりをしたことが如実に窺える内容で、言い換えればMAGNUMの音に近づいたという印象。#3「Carpe Diem」などはそれが顕著に表れている。また、TEN同様この音楽を支えている貢献者、ヴィニー・バーンズのプレイも相変わらず圧巻で、特に#1「The Pain」の数段階に盛り上がる狂おしく弾きまくるフレージングは、TEN以降の彼のプレイの中でもベスト3には入るであろう見事なソロ。ゲイリー・ヒューズはこのアルバムでTENとの差別化を図ることに成功していると思う。「THE TOWER」と双璧をなす作品。

CHILDREN OF BODOM / HATE CREW DEATHROLL 【93点】

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フィンランドのスターバンド、CHILDREN OF BODOMの4作目。IN FLAMESやARCH ENEMYらと同様に独自の道で進化することに心血を注いだことが如実に伺える気合いの入ったアルバムだ。メロディを取り入れたヴォーカルをふんだんに取り入れているが決して軟化の道をたどることはなく、彼らならではのヘヴィでアグレッシブな硬質サウンドと、アレキシ・ライホとヤンネ・ウィルマンの激しく鬩ぎ合うバトルは無論本作でも健在。バンド本来の魅力と新しい試みを生真面目に研鑽した結果生まれた相乗効果が、手詰まり気味だった楽曲のアイデアをひとつ上のレベルに押し上げている。個人的にはこれまでのCOBは単調にわめきちらすアレキシのヴォーカルが唯一不満だっただけに、この進化は大歓迎。#1「Needle 24/7」、#9「Hate Crew Deathroll」などはブルータル・ヘヴィメタル・チューンの最高峰といいたい。ホントに血管がブチ切れそう。

DARE / OUT OF THE SILENCE 【93点】

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THIN LIZZYのキーボード・プレーヤー、ダーレン・ワートンが結成した英国叙情ロックバンドの1st。ダーレンがリード・ヴォーカルを担当、ギターはヴィニー・バーンズ。澄みきった叙情性がメロディや楽曲から発散されているが、そのサウンドに乗るダーレンの程良く掠れた深みのあるヴォーカルはDAREサウンドの決定打となっている。ヴィニーのギターは#6「The Raindance」、#7「King Of Spades」、#9「Return The Heart」、#10「Don't Let Go」を筆頭に脳裏に焼き付く素晴らしいフレーズを刻んでいる。美しいピアノの旋律とコーラスハーモニーに鳥肌立つ#3「Nothing Is Stronger Than Love」の出来は筆舌に尽くしがたい。ラストを飾る#10「Don't Let Go」のイントロのあまりに切ないピアノのフレーズに腰砕け。

DARK TRANQUILLITY / HAVEN 【91点】

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5th。「今度は全部クリーンヴォイスでいく」なんていっておきながらほぼ100%デス・ヴォイスになっててリスナーを驚かせた最新作は、アグレッション・ブルタリティ・メロディの全てが凝縮された叙情デスの名盤だ。初期の彼らは僕にはちょっと難解だったが、本作のコンパクトにまとめられた楽曲群はシンプルだがどれも緊張感に満ちていている。少なくとも過去のどの作品よりも気に入った。ミカエル・スタンネのヴォーカルも、前作までは聴いてて喉が痛くなる声に聞こえてあまり好きではなかったが、今回の声はいい感じ。これも喉をつぶさないような詩に力をいれた成果なのか。どの曲も同じ調子で平均化してるとか、クリーン・ヴォイスが減ったせいで前作のようなメランコリックさが減少しているとか、ネガティブな意見もなくはないが、何度も聴いていると結局「バランスがいい」という一言に集約される。

DARK TRANQUILLITY / DAMAGE DONE 【92点】

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前作「HAVEN」は言行不一致が引き起こした結果、ある意味「意外」な作品として接しざるをえなかったが、その言動や周囲の雑音を除いて捉えればブルータル・ヘヴィメタル最高峰の傑作であった。そして、余計な疑念も払拭した状態で向かい合うことができた本作は、こちらの予想通りの音楽性を維持ながら、最高傑作であった前作をも凌ぐ内容に圧倒された。「PROJECTER」をよりメタリックにした「HAVEN」を踏襲しながら、それらのエネルギーを失わずによりパワフルに、ブルータルに、アグレッシブに進化を遂げた楽曲群の力強さは、ヘヴィメタルの全ての魅力を内包している。#3「Monochromatic Stains」、#8「Cathode Ray Sunshine」が頭一つでているが、それよりもアルバムを通して感じる恐いくらいに整った均一感に脱帽だ。悪く言えば起伏が少なく平均的ということになるけれども、DARK TRANQUILLITYという集合体から発せられる深遠で濃密な空気が大好きは自分としては、至福このうえない12曲。

DIMENSION ZERO / PENETRATIONS FROM THE LOST WORLD 【92点】

IN FLAMESのイエスパー・ストロムブラードと元IN FLAMESのグレン・ユングストロームのプロジェクト。持ちバンドとの音楽的方向性の違いはさほどなく、IN FLAMESを更にアグレッシブに、硬質にした感じだ。咆哮と共に幕開ける#1「Through The Virgin Sky」は怒濤のリフと怒りのヴォーカルと疾走のアグレッションを兼ね備えた名曲で、序盤押さえ気味の哀愁が一気に爆発するギター・ソロでは失禁間違いなし。続く#2「Dead Silent Shriek」、#3「Forgotten...But Not Forgiven」も怒りと哀しみに溢れた素晴らしい出来だ。ミニアルバムなので曲は少ないが、このプロジェクトの質の高さは否応なしに伝わってくる。

DISARMONIA MUNDI / MIND TRICKS 【93点】

メタル不毛の地・イタリアが産んだ奇跡のエクストリーム・メタルバンド・DISARMONIA MUNDI(ディサルモニア・ムンディ)の2ndアルバム。メイン・ヴォーカルは前作同様SOILWORKのビヨーン・スピード・ストリッドで、デスヴォイスはもう一人クラウディオ・ラヴィナールが担当。それ以外の楽器パート全て&クリーンヴォーカルを担当する奇才、エットレ・リゴッティの全編に渡っての「エモ・エクストリーム」サウンドが全開。近未来的な味付けを施したデジタル風味はあくまでもオーセンティックなヘヴィメタルがベースになっており、劇的で激烈なサウンドをうまく引き立てている。そのバランス感覚とアレンジセンスはまさに天才的といっていいだろう。どの曲も破壊力抜群のHMリフ×メロディックなコーラスという方程式を徹底して貫いており、洗練された知的なメタルっていう感じが自分的にかなりポイントが高い。ネームバリューではIN FLAMESとSOILWORKがこの手のサウンドでは群を抜いているが、アルバムの完成度からしてこの2強に割って入るだけの魅力がある。あとはバンドとしてライブ活動ができればいいのだが…。(H)

DREAM THEATER / METROPOLIS Part.2 SCEANS FROM A MEMORY 【92点】

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コンセプトアルバム。骨格になる部分に静寂なパートが多く、ある種のインパクトを期待していた僕にとって1度目は肩すかしを食らった気がするが、何度も繰り返す内に彼らの妙技の洪水にああ絶句。登場人物の感情や、情景描写、さらに時空を超越した感覚が脳裏にこびり付いていく。各メンバーの織りなす完璧な演奏はもちろんすごく、新メンバーのジョーダン・ルーデスもこのバンドに新たな息吹を吹き込んでいる。彼らの底なしの表現力は「コンセプト」と呼ぶことの意義を改めて考えさせられる。DREAM THEATERにしかできないことを最大限の力で構築し、表現するというのは彼らならではのプレッシャーだろうが、その予想や期待を遙かに上回る作品を作ってしまうのは恐るべき事だ。

DREAM THEATER / TRAIN OF THOUGHT 【92点】

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「SIX DIGREES OF INNER TURBURANCE」以来1年9ヶ月ぶりの新作。2枚組だった前作、コンセプトアルバムだった前々作は共に場面描写を緻密に描いた崇高で芸術性の高い作品で、多くを理解するのに聞き手に相当の集中力が求められる作品だった。今回は曲数を7曲とコンパクトにしながらも、ほとんどの曲が10分前後というナンバーで相変わらずスケールの大きさを感じさせるが、今回はその質が近年の作品とは違う。全編に覆われた“ヘヴィメタル”な空間が問答無用の緊張感を生み出し、あっという間にアルバム一枚を聴き終えてしまう勢いに満ちている。もともと「プログレ・ハード」「プログレ・メタル」と形容されていたバンドであるが、これまで以上にメタルの要素に比重を置いてヘヴィメタルが生み出す根元的な情感を、一気に沸点まで喚起させるサウンドに一発KO。毎作各プレイヤーの超人的なテクニックと表現力に感嘆しつづけているが、特にジョン・ペトルーシの何もかも超越したかのような激速プレイにはただただ平伏すのみ。最近の流れからするともう少し情緒的な感動も欲しかった気もするけれど、それは贅沢な要望だろうか。(H)

DREAMTIDE / DREAMS FOR THE DARING 【93点】

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ヘルゲ・エンゲルケ率いるFAIR WARNINGの魂を継承するバンド、DREAMTIDEの2年ぶり2ndアルバム。前作はオラフ・ゼンクバイルのヴォーカルに無理があるだとか、装飾過多だとかいろいろ不満があったのだが、つまるところ楽曲の完成度が納得いかなかったが故に粗探し的に触れてしまったのである。しかし本作では、そういったものを微塵に吹き飛ばすエナジーに満ちた名作になっているから驚きだ。オープニングとして完璧な#1「Dream Real」、その勢いをさらに加速させる#2「Live And Let Live」だけでも、溢れんばかりのドラマティックなメロディの洪水と濃密な音作りにどっぷりと飲み込まれていく。そのあとはただひたすらダイナミックな楽曲群に身を委ねるだけだ。どの曲もツボを心得ており、特に序盤〜中盤の充実度は素晴らしい。オラフのヴォーカルは相変わらず高音域で少々苦しそうだし垢抜けない部分も残っているが、曲作りがよりオラフ向きなのか、マイナスポイントと感じることもさほどない。このアルバムで、個人的にはFAIR WARNINGやZENOと肩を並べる存在になった。(H)

EMBRACED / AMOROUS ANATHEMA 【93点】

正統派HMを踏襲したプログレッシブ風味のメロディック・デスメタル。全編にわたってピアノとキーボードの旋律が響きわたる中、ツイン・ギターの哀しい叙情的なフレーズ&タイトなリフとそこに絡みつくデス・ヴォイス。一連のメロデス・バンドのような美醜のコントラストがはっきりしている。しかしこのバンドの個性は、DREAM THEATERのようなプログレッシブな展開と優れた情景描写にあるといっていい。曲の中にきっちりとしたメリハリをつけ、聴き手にアーティスティックなイマジネーションを掻きたてる。主役のピアノ・キーボードに、IN FLAMESやARCH ENEMYの泣きのギター・フレージング、なおかつ「IMAGES AND WORDS」の頃のDREAM THEATERが見せたHMフィールドから決して外れない劇的な曲展開と変則リズムを織り交ぜたような本当に贅沢なアルバム。

ETERNAL TEARS OF SORROW / A VIRGIN AND A WHORE 【91点】

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フィンランド産メロディック・デスメタルバンドの通算4作目。嗚咽のメロディを緩急自在に散りばめる彼らの魅力は本作でもより磨きがかかり、普通声を大胆に取り入れた#5「The River Flow Frozen(#11はアコースティック・バージョン)」などでより意欲的な姿勢を見せている。基本的にメロディアスなリフを軸に曲を組み立てていくバンドなので、いずれの曲もはじまってすぐにグッと掴まされるものが多い。キーボードが先導していく中で、それとバランスを取るかのようにフィーチュアされている泣きメロ・ギターの集中豪雨は扇情力抜群でそのダイナミズムに圧倒される。相変わらずヴォーカルの表現力の乏しさは改善されていないが、生理的に受け付けない声でないので気にならない。ボーナスはACCEPTの「Sick, Darty And Mean」とPARADISE LOSTの「As I Die」でどちらも見事。捨て曲無しの必聴盤。

EUROPE / SECRET SOCIETY 【92点】

北欧の雄・EUROPEの再結成第二弾。正直あまり期待値が高くなかったが、これがまた予想を覆した素晴らしい内容。ジョン・ノーラムのいるEUROPEとはいえ、もちろん全盛期のバンドとはかなり違う方向性を歩いている現体制。しかしこれはこれでいい落ち着きどころなのかもしれない。ジョーイ・テンペストの天才的作曲センスと、音圧がビンビン響くへヴィなジョンのギターがいい感じに調和が取れている。どの曲もサビが非常にキャッチー、なんといってもジョンのフィーチュア度が高いのがうれしい。かなり弾きまくってます。#11「Devil Sings The Blues」のラストに延々と奏でるソロは鳥肌モノです。#3「The Getaway Plan」はTHIN LIZZYっぽかったりして、クセになる大人の味だ。(H)

EVANESCENCE / FALLEN 【93点】

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女性フロントマンを擁する米国発ゴス系ヘヴィロックバンド、EVANESCENCEのデビューアルバム。北欧ゴシック系バンド顔負けの美しくメランコリックなメロディとモダン・ヘヴィロックの本場・米国の土壌が生んだ貫禄あるサウンドがブレンドされた音がとても新鮮。何より魅力的なのがヴォーカリストエイミー・リー嬢の素晴らしいヴォーカルだ。透明感、力強さと巧さ、色気を兼ね備えた伸びと張りのある声はロック度を増すばかりでなくフェロモンに満ちた妖艶で荘厳な世界を形成している。オープニングを飾る#1「Going Under」からしてその迫力と美しさにノックアウト。独特のモダンロック臭も北欧系のメランコリックなメロディに中和していて親和性があり、モダンヘヴィロックのファンだけでなく普遍的なロックが好きな人になら誰でもアピールできる内容だ。女性版LINKIN PARKといった具合に評されているようだが、それは彼らが世に注目されることになった、映画「デアデビル」のサントラ収録曲「Bring Me To Life」がLINKIN PARKっぽいMC入りの曲だったからのような気がする。特にお気に入りの#6「Torniquet」を筆頭に名曲揃いの名盤デス。

FAIR WARNING / FAIR WARNING 【93点】

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HR/HMの名盤として間違いなく歴史に残るであろうFAIR WARNINGの記念すべきデビューアルバム。フックに富んだ哀愁のメロディをたっぷり含んだ美旋律は寸断なく最後まで続き、その質の高さに平伏すのみである。ハードロックの醍醐味溢れる#1「Longing For Love」#5「One Step Closer」#7「Out On The Run」#11「The Heat Of Emotion」、美しいメロディをとダイナミズムが魅力の#2「When Love Fails」#4「Crazy」#10「Take A Look At The Future」、狂おしく胸を締め付けるバラード#8「Long Gone」#12「Take Me Up」と、とめどなく流れるドラマティックワールドに陶酔。

GOTTHARD / G. 【92点】

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明らかに「歌モノ」で勝負しようという姿勢に変わった3rd。「Let It Be」「Father Is That Enough」等今までにはなかったキャッチーでメロディアスな楽曲が増えた。そのクオリティは非常に高く、卓越したコンポーズセンスには脱帽である。お得意のブルージーな骨太HRチューン「Make My Day」、悲しみに堪えるバラード「One Life, One Soul」、ヘヴィでタメの利いた「Fist On Your Face」、ドライブ感たっぷりのハイテンションな「Ride On」とバラエティに富み、カバーの「Mighty Quinn」のアレンジ力や「Immigrant Song」ではスティーブ・リーの歌唱力のすごさを改めて思い知らされる。幅を広げたことで一皮むけた印象だ。

HAREM SCAREM / HAREM SCAREM 【92点】

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ハリー・ヘス、ピート・レスペランス率いるカナダ出身のメロディアス・ハードロックバンドのデビューアルバム。美しくポップなメロディと麗しいヴォーカルハーモニーに彩られた甘美な楽曲が満載で、研ぎ澄まされたポップセンスがたくさんの結晶となって降り注いでくる感じが非常に心地よい。ミディアムテンポの似たような曲ばかりだがいずれの曲にもフィーチュアされたキャッチーでストレートな旋律は極上のメロディックワールドを作り出している。ハリー・ヘスが17歳のときに書いたという#4「Honestly」はロック史に残る珠玉の名バラードだ。デビューアルバムにして恐るべき統一感のあるアルバム。ボーナストラックの3曲のアコースティック・バージョンもこれまた秀逸。

HAREM SCAREM / MOOD SWINGS 【92点】

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前作に比べよりハードなエッジを強調したスケールの大きなアルバム。外部ライターの起用はなく、自らのソングライティングの力を様々な方法論で見せつけた意欲作だ。それぞれの楽曲に前作にはなかった豊富なアレンジとバラエティが生み出され、彼らの底知れぬコンポーズセンスを思い知らされる。緩急が美しい#4「Change Comes Around」をはじめ、1stにも通じるキャッチーなメロディの#1「Saviors Never Cry」、#3「Stranger Than Love」、グルーブ感のある#2「No Justice」、情感たっぷりの美しいバラード#9「If There Was Time」、美旋律インストの#7「Mandy」、重厚な#8「Empty Promises」、#5「Jealousy」など様々な顔を持った曲が並ぶが、どれもHAREM SCAREMならではのエモーショナルなメロディとハードロック然とした屈強なパワーを持っており散漫さは全くない。彼らのクリエイティビティが開花した名盤。

HAREM SCAREM / HIGHER 【92点】

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完全復帰作「WEIGHT OF THE WORLD」から1年半ぶりの通算9作目。ハードでポップなHAREM SCAREM節が全開で、いずれの楽曲にもフックに富んだ美しいメロディがフィーチュアされており、「ハードロック」に重点をおいた作風は1stや2ndの頃のイメージに近い印象だ。楽曲そのものには特に新鮮味もなくやや小粒な印象を受けるものの、ストレートに伝わるメロディラインに素直に心が揺れる極上品であるし、シンプルながら彼らならではのアレンジセンスも十分に生かされている。ピート・レスペランスのタメの利いたギターワークも絶品だ。チャレンジ精神旺盛なバンドにしてはやや物足りない部分もあるのかもしれないが、背伸びせず、自然体な姿勢から溢れ出るHAREM SCAREMの魅力が満載の好盤ではないだろうか。粒ぞろいの楽曲が揃ったアルバム全体の空気感はかなり気に入った。ピートの泣きのギターとハリーの絶唱が涙を誘うボーナス曲#11「Wishing」は言語に絶する美しさだ。(H)

HELLOWEEN / MASTER OF THE RINGS 【92点】

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マイケル・キスクとインゴ・シュヴィヒテンバーグが去り、アンディ・デリスとウリ・カッシュが加入しての再出発作。正直言って個人的にはマイケルもアンディも好みのシンガーではないのだが、このアルバムを聴く限り、アンディはHELLOWEENというバンドに新しい血を注ぎ、ここ数年のモヤモヤをどこか遠くに吹き飛ばしてしまった功労者であることは確信できる。何か吹っ切れたかのようにメンバーのソングライティングにも強い芯が生まれアルバムを通して妥協が一切感じられない。スピード、メロディ、ドラマのHELLOWEENサウンドを構成する要素が三位一体となって生み出るサウンドは、原点に立ち返った結果生まれた結果であろうか。イントロの「Invitation」に続く#2「Soul Survivor」、#3「Where The Rain Grows」は圧巻のヘヴィ・メタル・チューンで、メンバー全員の熱い集中力が集約されている。つづく#4「Why?」はアンディがPC69時代に書いた曲だが、これもHELLOWEENの新しい魅力を引き出した佳曲といえる。そんな中でも彼ららしいセンスとユーモアに溢れた#6「Perfect Gentleman」、#7「The Game Is On」や、#8「The Secret Alibi」らでバラエティを生み、アンディのしっとりとした低音ヴォイスが堪能できるバラード#10「In The Middle Of Heartbeat」、そしてメタリックな疾走感とツインギターのソロの醍醐味が味わえる#11「Still We Go」と、充実した楽曲が続いてお腹もいっぱい。ウリ・カッシュの超人的なドラミングもこの音楽には追い風だ。多くのフォロワーを生み出した大御所が、再び圧倒的な存在感を示した傑作。

HELLOWEEN / TIME OF THE OATH 【91点】

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前作ですっかり威厳を取り戻した彼らが、腰を据えてどっかりと制作した感のある貫禄の充実作。前作の段階でかなりのインパクトを受けたのでそういう面ではあまり強烈な印象ではないが、ここに並んでいる楽曲の質は前作に勝るとも劣らない粒ぞろいの曲ばかり。#1「We Burn」から#4「The Power」まで途切れることのない緊張感でハイパワーなメタル・チューンで固め、その後アンディ色全開のバラード#5「Forever And One」で一気に落とす。その後すぐさま疾走する#6「Before The War」#9「Kings Will Be Kings」やお得意のコミカル・チューン#8「Anything My Mama Don't Like」、メロウなバラード#11「If I Knew」。荘厳な「The Time Of The Oath」と、全く隙のない構成で畳み掛ける流れは圧巻である。意欲が前面にでた会心の作品。

IN FLAMES / THE JESTER RACE 【96点】

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メンバーが固定されず、まだ不安定な部分が多かった1stから大きくスケールアップした2nd。幾重にも折り重なる叙情の波状攻撃はこっちの気がおかしくなるくらいドラマティック。絶品のリフではじまる#1「Dead Eternity」から#2「The Jester Race」#4「Moonshield」#5「The Jester's Dance」と叙情的なナンバーがずらりと並び、ギターソロの官能が頂点に達する暴虐のキラー・チューン#6「December Flower」を挟んで後半も#7「Artifacts of Black Rain」#8「Dead God In Me」#9「Wayfaerer」#10「Load Hypnos」と、抜け目の全くないドラマティック・ナンバーで埋め尽くされている。泣いて泣いて泣きまくる叙情メロディと、激しい憎悪を剥きだしにするデス・ヴォイスのコントラストの美しいことこの上ない。

IN FLAMES / WHORACLE 【94点】

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メロディの質量のみならず、楽曲そのものの細部まで詰め、プロダクションも格段と良くなった3rd。ヘヴィメタルの持つ普遍的な部分をより高め、胸打つドラマティックな展開とアグレッシブな攻撃性はとどまるところを知らない。オープニングナンバー#1「Jotun」の悶絶リードギター&炸裂リフにはじまり、一緒に叫べるIN FLAMES永遠のアンセム#9「Episode 666」あり、勇壮なスピードメタル#5「The Hive」あり、慟哭のスローナンバー#6「Jesper Script Transfigured」あり、流麗なインスト#4「Dialogue With The Star」ありと、どこを切ってもIN FLAMES節炸裂の超メロディアスな1枚。終盤のインスト#11「Whoracle」あたりでは恍惚状態である。ボーナス曲#12「Goliaths Disarm Their Davids」も素晴らしい。あらゆる感情を刺激する美しさと激しさが充満した名盤。

IN FLAMES / COLONY 【95点】

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前作リリース後、グレンとヨハンが脱退。ビヨーンがギタリストに転任、ダニエル・スヴェンソンを迎えて制作され、全体的な整合性と統一性に磨きがかかった4th。サウンド的にはさらに普遍的HMに近づきメジャー感が大幅にアップ。オープニングトラックの#1「Embody The Invisible」はその方向性を究極のレベルで表現した究極の名曲。#2「Ordinary Story」や#4「Colony」でみられるヴォーカル・エフェクトやハモンドオルガンの導入などでアレンジでもどん欲な進化の姿勢を見せている。もちろんその中にもIN FLAMESらしいメロディックでアグレッシブな部分は微塵たりとも失われておらず、全てに置いてスケールアップした音の洪水は圧巻、分厚い音で畳みかける13曲は至福のひとときだ。泣きは徐々に後退しているが、ひたすらアグレッションにこだわる姿勢はますます進化している。

IN FLAMES / CLAYMAN 【94点】

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通算5作目になる本作では、「IN FLAMES流」という自らが作り出した一つのジャンルをさらに昇華させただけでなく、新しい要素をどんどん加えている貪欲な姿勢が、進化と深化というカタチで結実しているところがポイントか。アンダースの緩急をつけた豊かなヴォーカルが、ツインリードのアグレッシブなギターと抑揚のあるアレンジの上に乗るスタイルが定着し、最初から最後まで緊張感バリバリの構成。特筆すべきはやはりそのアンダース・フリーデンの成長だろう。とかく一本調子になりがちなデス・メタルにおいて、これだけ多くのスタイルとアレンジ、そして表現力豊かな声には舌を巻く。アンダースというフロントマンの存在はIN FLAMESの音楽を形成する最も重要なファクターのひとつだ。

IN FLAMES / SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE 【97点】

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世界進出を目論んだ前作「REROUTE TO REMAIN」ではモダンなサウンドを導入し賛否両論を生んだが、常に前進しようとするバンドの意欲が表れた自然な進化であり、決してIN FLAMESの根底に流れる血を汚したような安易なものではないと思う。方法論としても出来上がったサウンドにしても「賛」どころか「絶賛」できた名盤で、元々IN FLAMES贔屓の血に染められていたものがまた新しい血によって全身塗り替えられるぐらい衝撃的だった。その方向性をさらに押し進めた本作は、まさに「REROUTE〜」の続編といった印象。ファーストインプレッションこそ、ブルータル・デスの#1「F(r)iend」の残像がひきずったのと(IN FLAMES=オープニングトラックは叙情美溢れる名曲、なる公式を勝手に思い描いていたので…)、全体を通してコーラスのメロディがちょっと地味に映って正直テンションが上がらないまま聴き終えたのだが、このサウンドを理解するには何度も聞き込みが必要な複雑さと密度の濃さがあることは前回の学習で百も承知であり、そういう意味ではある種の安心感と期待感に包まれた。そもそも「REROUTE〜」で驚嘆したのは何と言ってもリフとリズム。IN FLAMESといえばメロディが肝、という認識を良い意味でそれらの要素が追い抜いていく感覚…それと同様のリフとリズムの麻薬的魔力は本作でも抜群に効いている。#2「The Quiet Place」や#6「My Sweet Shadow」などの浮遊感+重いリズムなどは表現として完全に確立された感がある。今回もまた「進化した」というに足る底なしの才能を見せつけられた。ま、いまだに地味かなぁといった印象はあるものの、予想通り、回数を重ねるたびに好きになっていく楽曲ばかりずらりで、永く愛せるマスターピースなアルバムになりそうだ。(H)

KALMAH / SWAMPLOAD 【91点】

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ETERNAL TEARS OF SORROWの主要メンバーが3人在籍するフィンランド産メロディック・デスメタルのデビューアルバム。メロデスかくあるべしといわんばかりの王道路線をいく北欧トラッド風味の音楽性で、美醜のハッキリした緊張感バリバリの美旋律・ヴォーカルの咆哮も絶品。数多くのメロデスバンドが蠢くシーンの中でこれほど直球勝負をして心を打たれるということは、すなわち楽曲を創造し構築する能力が優れているということだろう。メロディの質・量とも半端なものではなく、リフにまでも泣きのメロディが散りばめられている。どの曲も素晴らしいが特に後半#6「Hades」〜#8「Using The Word」の流れが好き。メロデス好きなら必聴の1枚。

MASTERPLAN / AERONAUTICS 【93点】

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2年振りの新作となる2ndアルバム。いやー1回ぽっきりのプロジェクトに終わらなくてよかった…。2作目にしてバンドとしての焦点を完全に定めた音づくりがされたとの印象。それほどジャーマン臭くもなく、スピードに頼らずに良質なメロディをミドルテンポ主体の楽曲にのせ、ヨルン・ランデの低音域を生かしたつくりはこのメンツでは最高のベクトルだと思う。前作の名曲(輸入盤のみ)「Enlighten Me」系の#2「Back For My Life」、#4「I'm Not Afraid」みたいな少し抑えた感じのニュアンスはこのバンドならではの醍醐味。「Heroes」にも通じるベタな#3「Wounds」、心地よいスピードに乗った#1「Crimson Rider」、#10「Falling Sparrow」あたりは屈指の名曲。極めつけは10分弱の大作#11「Black In The Burn」。曲展開が無茶苦茶ドラマティックでサビメロも最高だ。アルバム全体では中盤で若干ダレそうになるのが惜しいが、これだけ名曲が詰まった作品に大満足。前作より好きです。この系統のバンドの中でも生理的に一番好み。いろんなバンドで放浪していたヨルン・ランデには是非ここに留まっていてほしい。(H)

MY CHEMICAL ROMANCE / THE BLACK PALADE 【95点】

前作で爆発したMY CHEMICAL ROMANCEの新作。全編にわたる激情のエモーショナルワールドはそのままに、よりメロディックでキャッチーな曲が増えていてスケール感もかつてのアリーナロックを思わせる。オープニングイントロにつづく#2〜中盤までが特にすごい。#3「This is How I Disappear」と#4「The Sharpest Lives」に悶絶。Iron MaidenとかUKのバンドからも影響を受けている彼らのサウンドはジャンルを超えた音。エモはもちろん、ロック、メタルファンにも受け入れられるはず。古くて新しく、クールにはじけてる。モンスターアルバム的な風格が漂う一枚。これが売れなきゃ嘘だ。今年最大の衝撃作でした。(H)

NIGHT RANGER / DAWN PATROL 【90点】

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アメリカン・ロックを代表するバンド、NIGHT RANGERの記念すべきデビュー作にして最高傑作。アメリカンロックが持つエネルギーとダイナミズムを具現化した最高レベルの音楽だ。「Don't Tell Me You Love Me」のイントロは、何度聴いても飽きないどころか中毒になってしまうほどの魔力がある。ジャック&ケリーのダブルヴォーカルというスタイルは面白いし、アーミングの名手ブラッド・ギルス&8フィンガー、ジェフ・ワトソンのツインギターもまさに「バトル」という緊張感が漂っていて、それぞれの個性が生きている。そのツインギターが炸裂する「Eddie's Comin' Out Tonight」のギターバトルは、映像で見たらほんとうに鳥肌モノ。

PRETTY MAIDS / FUTURE WORLD 【91点】

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87年リリース。一瞬で空を切り裂くかのような冷たくソリッドなリフと輝かしいキーボードがフィーチュアされた#1「Future World」は悶絶必至のPRETTY MAIDSの代表曲ともいえよう。当時売れていたEUROPEに接近したようなメジャー志向のポップチューンもあり、新たなマーケットに眼光を向けた貪欲で積極的な姿勢が伺われる。スロウ〜ファストへの展開が劇的な#4「Yellow Rain」、王道パワーメタルチューン#5「Loud & Proud」の流れは圧巻である。その後のPRETTY MAIDSのスタイルであるメタリックな部分とポップな部分のバランス感覚はこの辺りからすでに存在しているといえる。

PRETTY MAIDS / SPOOKED 【91点】

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メタリックな様式美が完全復活し、元来持っているポップ・フィールも開花させた会心の名作。「SIN DICADE」「SCREAM」で物足りなかったのはやはりパワーメタルの持つドラマ性であり、ここでは#1「Freakshow」#2「Dead or Alive」#4「Fly Me Out」#7「Twisted」あたりでその血沸き肉踊るパワーメタルの本質がよみがえっている。これらの持つ普遍的な予定調和こそ彼らの持ち味であり、変わらないことの美しさなのである。かつてなかった超ヘヴィナンバー#6「Spooked」はこのアルバムの中でも個人的にはハイライトで、重くて速いリフから一転してテンポが変わるアレンジが美しい。#5「Live Until It Hurts」#9「Never Too Late」も溢れんばかりのフックに富んだポップ・ロックの名曲。しかしこれらもメタルチューンの充実さがあるからこそ浮きだつ要素だ。カバー曲#11「Hard Luck Woman」の出来が素晴らしいのに、この中では決して目立たないのは、このアルバムの持つ魅力が大きいという証明だ。

SEX MACHINEGUNS / SEX MACHINEGUN 【93点】

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メジャーデビューアルバム。典型的なヘヴィメタルの名盤。ルーツがはっきりしていて元ネタがバレバレのものもあるが、それこそHR/HMファンの琴線を刺激しまくる様式美に溢れている。オープニングのタイトル曲「Sex Machinegun」でのマシンガンリフは、これまで聴いてきた数々のHMチューンの中でも随一のかっこよさ。驚愕のコーラスの歌詞も含めて鳥肌ものの1曲。哀愁漂う#2「Japan」、「さ!そ!り!」とデスっぽいコーラスがハマリの#3「Scorpion Death Rock」、イングヴェイっぽい北欧メタルな#4「Devil Wing」、マシンガンズらしいコーラスでライブでは欠かせないであろう#5「桜島」、イントロから美しいギターソロで聴かせる#7「ファミレス・ボンバー」、犬の視点で作った哀愁たっぷりなメロディとコーラスで犬に同化できる#8「犬の生活」、典型的なHMの醍醐味で終盤を締めくくる名曲#9「HANABI-La大回転」、#10「Burn」と、隙のない充実した楽曲に確かな演奏力、そしてハメを外す歌詞のセンスと、SEX MACHINEGUNSというバンドのキャラクターとアイデンティティを強烈に形成している。(H)

SEX MACHINEGUNS / SM SHOW FINAL(DVD) 【94点】

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武道館での解散ライブを記録したDVD。2枚組全24曲。最後のライブという特別な空気の中、常に尋常じゃない熱気がさらにヒートアップして、会場全体がまさに燃えているかのような熱すぎる内容。個人的にマシンガンズの中で好きな曲ベスト5でもある「みどりのおばちゃん」、「そこにあなたが...」、「Sex Machinegun」、「みかんのうた」、「BURN〜愛の炎を燃やせ〜」が全て網羅されているのが嬉しい。ライブ直前のバックステージでの緊張感、オープニングでの美しいツインギターからはじまる熱狂渦巻く多くの名曲のパフォーマンス、そしてラストを飾る「Sex Machinegun」のあとの各メンバーの泣けるメッセージ…。映像でこんな感動するんだから、この場にいたらなぁと悔しさすらこみ上げてくる。いやしかし、その感動と興奮を喚起するすっごくクリアな映像と音、巧みなカメラワークもこの手の作品としては超一級品だ。それにしても、これだけの長時間でハイテンションなライブでありながら、Anchang(Vo,G)の超人的なシャウトが全くパワーダウンしないところや、一糸乱れぬバンドのリズミカルな一体感も筆舌に尽くしがたい。ヘヴィメタルって素晴らしい!と思わせる最高のバンドだと思います。(H)

SEX MACHINEGUNS / HEAVY METAL THUNDER 【93点】

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今ではすっかりコアなファン気取りだが、実はバンドとして新作をリアルタイムで購入するのは実は初めて(ソロ除く)。「IGNITION」のときはリリース後半年ぐらいたって気づいたりと、要するに自分がマシンガーと自負したのは解散後だったわけ。あっという間の復活劇、そして正統派HMでリスタートするという宣言とともにリリースした復帰第一弾アルバムの冠は「HEAVY METAL THUNDER」。既にライブで体験済みだったタイトル曲はまさにHMの新たなアンセムとして燦然と輝く名曲だ。シングルとして出ていたストリングスを取り入れたドラマティックな#5「サスペンス劇場」、スピード感たっぷりの伝統的メロディックHM#9「出前道一直線」といった王道HMチューンが主要ポイントを固める曲構成は屈強で、メンバーの強い魂を感じる気合い十分の内容に仕上がっている。ジャーマンメタル調の#2「伝説のキャッチボール」、「ONIGUNSOW」を超えるバンド史上最速という#3「焼き肉パーティー」あたりまでの力強さにはぐぅの音も出ないほどだ。ライブ受けしそうな#6「パンダちゃん」、#7「踏み台昇降運動」などもこれまでのマシンガンズの魅力をまとめあげた、間違いなくファンを魅了する仕上がり。ラストを飾る「4」はモダンな味付けで異色な存在だが、シリアス・メランコリック・ヘヴィな雰囲気は非常に好き。ワールドクラスのテクニックとライブパフォーマンスで、是非世界相手に暴れまくってほしいものである。(H)

TALISMAN / GENESIS 【91点】

正統派ヴォーカリストの代表的存在、ジェフ・スコット・ソートと天才ベーシストマルセル・ヤコブのバンドの2nd。キラキラしていた1stからすると一転、まさにメタルの王道をいく楽曲・リフの応酬。たたみかける#1「Time After Time」#2「Comin' Home」#3「Mysterious」の流れ、アレンジを凝った名曲#4「If U Would Only Be My Friend」、イントロのギターとベースのユニゾンが絶品の#5「All Or Nothing」、そしてフックのあるメロディアスな#9「Give Me A Sign」と、美しいメロディの上にジェフ独特のグルーブ感のある伸び伸びした歌唱がのる、完成度の高い楽曲がひしめく。

TEN / TEN 【94点】

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ゲイリー・ヒューズとヴィニー・バーンズという新たな名コンビを生んだ、エモーショナルなハードロックの歴史的名盤。ポップでコマーシャルなアメリカンタイプの曲から憂いに満ちた欧州ブリティッシュロックまで、ことハードロックのオイシイ部分を全て詰め込んだような楽曲がひしめく。特に#2「After The Love Has Gone」と#10「The Loneliest Place In The World」を筆頭とする哀愁系ブリティッシュハードロックナンバーの質が果てしなく素晴らしい。その「After The Love Has Gone」のメロディアスなリフといかにも英国の煮え切らないコーラスのメロディの調和は筆舌に尽くしがたく、大作「The Loneliest Place In The World」の壮絶ギターソロの泣きは絶品。終始メロディに拘る姿勢は美しい。

TEN / THE NAME OF THE ROSE 【93点】

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デビューアルバムからわずか半年というスパンを経てリリースされた2nd。楽曲はすでに1stのころに出来上がっていたという。しかし、それは1stの余った曲を寄せ集めたものではなく、同等レベルの質で出したところに彼らのポテンシャルの高さを見いだせる。オープニングを飾る#1「The Name Of The Rose」はHR/HMの魅力を凝縮した名曲だ。叙情的なイントロから一気に炸裂するシャープでスピーディなリフは初めて聴いた時身悶えた。#2「Widest Dream」#3「Don't Cry」#4「Turn Around」と甘くてポップな佳曲が並んだ後、インストを挟むドラマティックチューン#6「Wait for You」、憂いのあるミドルテンポの#7「The Rainbow」、紡ぎ出すメロディが美しい#8「Through The FIre」、普遍的なロックバラード#11「Standing In Your Light」と、ハイライトとなる曲がバランスよく配置されている。中には冗長な曲もあってアルバム全体ではだれる部分もあるが、これはゲイリーの趣向なので、目をつむってしまおう。

TEN / FAR BEYOND THE WORLD 【92点】

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自己の本質を追求し原点回帰に成功した素晴らしいアルバムだ。ここ数作は、良くも悪くもゲイリーの大作志向がアレンジと楽曲の質のバランスの中で調和が取れたり取れなかったりという状態が続いていたが、本作では大作志向を捨ててでも(でも平均5分後半)良い曲を書こうという、メロディへ心血を注ぎ込んだ姿勢が如実に曲に反映されている。どの曲も起承転結がはっきりし、明快なフックがあって親しみやすい。個人的には、アルバムを強烈にリードするキラーチューンが見あたらないのと、4th「SPELLBOUND」にあったドラマティックに胸を締めつけるタイプ曲がないのが寂しいが、アルバムとしてのバランスは非常にいいし、ゲイリー・ヒューズ面目躍如、ソングライターとしての力は本物だということを立証してくれたことが何よりも嬉しい。それにしても、本作でも光輝いているヴィニーのギターを聴いていると、脱退という現実が信じられない。#11「Outlawed And Notorious」の壮絶な速弾きで、出てくるのは涙のみ...

THIN LIZZY / THUNDER AND LIGHTNING 【93点】

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ブリティッシュ・ロックのカリスマ、フィル・ライノットのバックに、ジョン・サイクス、ダーレン・ワートン、スコット・ゴーハム、ブライアン・ダウニーという顔ぶれを揃えた最終期のTHIN LIZZYラストアルバム。ジョンを入れたことで生まれたヘヴィ・サイドのタイトル曲#1「Thunder And Lightning」と彼の最高傑作リフ#5「Cold Sweat」、そして延々弾きまくるギターソロの名曲#7「Baby Please Don't Go」の泣かせ度は半端じゃない。ジョンとダーレンのギターvsキーボードバトルの凄まじい「Thunder And Lightning」#6「Someday She Is Going To Hit Back」、メロディアスな#4「The Holy War」#9「Heart Attack」など聴きどころ多数。

THUNDER / GIVING THE GAME AWAY 【92点】

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通算5作目。過去にいろいろなトラブルもあったTHUNDERだが、よい状態でメンバーのミュージシャンシップが発揮され、緻密に、繊細に仕上がった本作は過去最高の出来。名曲#1「Just Another Suicide」に引っ張られるように、2曲目以降も全編にわたって哀愁とフックに富んだメロディの洪水が押し寄せる。一体感が感じられるアルバム構成の中で、ヘヴィな曲やファンキーな曲も違和感なくおさまっていて、全てに自然体が生んだ力みのない余裕が感じられる。ソウルフルなダニーの歌唱を、ルークをはじめベン、ハリー、クリスのタイトなバックが彩る一体感は感動的で、円熟の極み。これぞブリティッシュ・ロックと体感できる名盤だ。

TO/DIE/FOR / WOUNDS WIDE OPEN 【95点】

フィンランド産ゴシックメタルバンド・TO/DIE/FORの5作目。初期のころは「Together Complete」、「Hollow Heart」といった単発キラーチューンがアルバムに一曲入っているという印象で、どうもアルバム単位ではイマイチ感が拭えなかったが、前作「IV」で大化けして個人的には数あるゴシックメタルバンドの中でも特にお気に入りのバンドに。本作でそれが完全に確立した。コンパクトかつキャッチーな構築美がどの曲にも満載。くどすぎないシンフォニックな味付けとデジタル風味のバランスもいいし、官能的なギターソロもさらに磨きがかかってる。前半のコマーシャルな路線もいいが、#5、#6あたりの、リードギターがバックグラウンドで歌うように追いかける展開が堪らない。OZZY OSBOURNEの「(I Just) Want You」のカバーもGoodだ。個人的にゴシックメタルの最高峰と位置づけさせていただく。{H)

TONY MACALPINE / MAXIMUM SECURITY 【90点】

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クラシカル技巧派ギタリスト、トニー・マカパインの2nd。トニーはベースとキーボードも担当、ドラムはディーン・カストロノヴォ、アトマ・アナー。「Autumn Loads」「Hundreds Of Thousands」「Tears Of Sahara」「Key To The City」「The King's Cup」等々、スリリングなプレイと泣き所をついた様式美メロディが洪水のごとく押し寄せる。まるで叙情的なヴォーカリストが歌っているのかと錯覚するほど「歌っている」ギターがスゴイ。本作には「Tears Of Sahara」と「Vision」でジョージ・リンチが、「King's Cup」でジェフ・ワトソンがゲストで参加。インストアルバムの決定盤。

USA FOR AFRICA / WE ARE THE WORLD 【95点】

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1980年代に起こったアフリカの飢餓の惨劇を救う「難民救済ブーム」に火をつけたアメリカのチャリティー企画。ハリー・ベラフォンテが最初に呼びかけ、作詞作曲を担当したマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーの3人が核となった。参加アーティストは51名で、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ダイアナ・ロス、レイ・チャールズ、スティーブ・ペリー、ヒューイ・ルイス、ティナ・ターナー、シンディ・ローパー、ケニー・ロジャース、ビリー・ジョエル、ケニー・ロギンスなどそうそうたるメンツ。全員で録音したコーラスと、約20人のアーティストによるソロ・パートを録音してレコーディングが終了した。このレコーディングの様子を収録したメイキング・ビデオは感動的で、ミュージシャンが人を救い、リスナーが人を救うという「チャリティー」の意義を深く感じ取ることができる。マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチーの作ったこの曲の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい完璧な曲であり、それぞれのアーティストが個性を発揮してより完成度の高い曲に仕上げていくプロセスに化学反応を見いだせる。この1曲を聴くだけで、ここに込められたメッセージを100%感じ取ることができるだろう。