Music Review : O-P

ONE OK ROCK / ゼイタクビョウ 【92点】

ONE OK ROCK / BEAM OF LIGHT 【82点】

感情エフェクト / ONE OK ROCK 【94点】

ONSLAUGHT / IN SEARCH OF SANITY 【86点】

ON THE RISE / ON THE RISE 【78点】

ノルウェー出身の男性ロックデュオ。メロディックで煌びやかなサウンドと爽快なハーモニーはNELSONを彷彿とさせる。北欧出身だけあって随所に透明感のある場面を作り出しており、非常にあか抜けた印象でクオリティも高いが、これといってグッとくる曲もなかった。(H)

OPETH / STILL LIFE 【82点】

ORION RIDERS / A NEW DAWN 【78点】

ORPHANED LAND / MABOOL 【88点】

なんなんだこれは一体…。こんな感触は未だ味わったことがない。中東はイスラエル出身のORPHANED LANDが8年振りにリリースしたという3rdアルバム。中東民俗音楽を全編に配した壮大なプログレッシブ・ゴシック・デスメタルといえばいいのだろうか。普段あまり馴染みもなければ正直好みでもない中東独特の音楽…のはずなのに、ここにはまさに日本人が諸手をあげて喜びそうな“泣き”のメロディに溢れている。なんだかよくわからないが、演歌がメタルに通じるのと同じような感覚なのだろうか。欧州寄りの湿り気、デス・ヴォイスとノーマル・ヴォイスの使い分け、DREAM THEATERのような情景描写と緻密な音づくり…と全てにおいてレベルが高い。全く恐れ入りました。(H)

OZZY OSBOURNE / BRIZARD OF OZZ 【80点】

OZZY OSBOURNE / OZZMOSISS 【82点】

鬼束ちひろ / INSOMNIA 【90点】

歌にこめられた強い意志と威力。背筋が凍るアルバムだ。ディープでネガティブなメッセージを汲みながら聴いていると、彼女の透き通る声とピアノの美しい旋律と相俟って心臓の鼓動が聞こえてくるぐらいの緊張状態になってくる。特にデビュー・シングルの再録#7「シャイン」は、何かに取り憑かれているかのような凄味に溢れている。彼女の中の深い深い奥底からでてくるものすごいパッションを感じる。代表曲#1「月光」をはじめ、#4「Edge」、#8「Cage」、#「眩暈」など名曲多数。じっくりとこの音楽を心で感じていたい。(H)

鬼束ちひろ / INFECTION 【88点】

ドラマ「氷点2001」の主題歌。「悲哀」のネガティブな感性が独特の鬼束ワールドは歌詞世界・楽曲においてさらに昇華し、僕はとても普通に、冷静に聴いていられない。張りつめた緊張感のなか、悲しいのに、優しく包み込むようにさえきこえる鬼束の声からは痛みを感じる。普段のほほんと暮らしている僕はデスやゴシックはあくまで音楽であるが、鬼束ちひろの曲を聴いていると別世界にトリップしてしまう。このエネルギーはいったい何だろう。(H)

鬼束ちひろ / THIS ARMOR 【87点】

独特の世界観で聴く者を魅了し、HR/HM畑のヒトの間でも悲哀系メタル直系の突き刺さる悲しいメロディと歌詞が好評の鬼束ちひろ待望の2ndアルバム。映像での姿を見ても、歌っているときの目にこめられたパワーに大きな存在感を感じるし、歌詞を見ながら聴いていると自然に「悲」の感情が渦巻いて襲ってくる。ことばとは、詩とは、メッセージとは、自分の存在とは。あらゆる哲学的な思考がめぐり、言われ得ぬ感情に包まれていく。そういった気分になるのは彼女の音楽ならではだ。名曲#6「流星群」、#9「Infection」はじめ、いずれの曲も深い深い歌詞世界が自分を別世界に誘ってくれる。(H)

鬼束ちひろ / SUGER HIGH【87点】

前作「THIS ARMOR」から9ヶ月という短いスパンでリリースされた3rdアルバム。その「THIS ARMOR」に収録されていた名曲「Infection」は、シングルリリース直後米同時多発テロが発生してしまい、歌詞の内容があの事件を想起させてしまうと言う理由で公の場で歌うのを控えたといわれている。また、体調不良のアクシデントで活動を休止せざるを得ない状況にも置かれた。TVのインタビューでも語っていたが、あの事件と故障は彼女自身心境の変化があったようだ。その影響かどうかはわからないが、このアルバムでは随所に人を包み込むようなメロディが散りばめられている。#3「Rebel Luck」、#5「Castle・Imitation」や#8「King Of Solitude」などがそうだ。また、#1「Not Your God」での低音の響き、#4「Tiger In My Love」での激しい抑揚、哀しみと孤独感に満ちた#6「漂流の羽根」。#7「砂の盾」など、「歌いたい」という強い姿勢が凄味のある声となって、聴き手の魂を揺さぶってくる。装飾は極力省き、羽毛田の奏でる透き通るピアノと、ストリングスを中心としたアコースティカルな響きが、より一層鬼束の声を引き立たせている。1曲1曲にこめられた芯の通った歌声は、やはり「痛み」がある。全編落ち着いたトーンで地味なアルバムに感じるかもしれないが、確実に進化した鬼束ワールドを存分に味わうことができる。(H)

鬼束ちひろ / ULTIMATE CRASH '02 [DVD] 【92点】

2002年11月5日の武道館でのライブを収録したDVD。シンプルなセット、2台のピアノ、演奏者のみに当てられるライト、そして全身を使って歌と詩を表現し、見る者全てをひきつける強烈な存在感のある鬼束ちひろワールドを堪能できる内容だ。シンプルがゆえに、見たあとにいつまでも脳裏に焼き付き、しばし呆然とその場に佇んでしまう。部屋を真っ暗にして、どっぷりと浸かるに限る。ファンならずとも、必見です。(H)

陰陽座 / 凰翼麟瞳 【88点】

ジャパニーズ妖怪ヘヴィメタルバンド、陰陽座の4thアルバム。ジャケット&ブックレットが超気合い入ったデザインでかなり気に入ったのだが、楽曲のほうもそれに見合った素晴らしい内容でただただ感激するのみ。日本人独特の抑揚があって涙を誘うクサいメロディが全編に炸裂しており、#2「鳳翼天翔」、#4「妖花忍法帖」、#8「面影」といったメロディックでストレートなHMの出来が特に際だっている。また、黒猫と瞬火の拳の効いた演歌調ヴォーカル(ホントうまい!)と、中盤のテクニカルなインストの組み合わせが新鮮な#5「鵺」はまさに「演歌プログレ」の趣で陰陽座ならではのオリジナリティが感じられる。サウンドもメジャー級だが、時折ギターの音が耳障りで節操なく感じるのが残念。(H)

陰陽座 / 夢幻泡影 【89点】

静かに盛り上がるオープニング#1「夢幻」での黒猫の透き通った美しいヴォーカルで既に陰陽座ワールドにトリップ。続く#2「邪魅の抱擁」でのメタル度100%のイントロを聴いたあたりでHMのドラマティシズムが全開だ。深遠なる和の世界観とそれを歌詞に乗せるばかりか、同時に違う歌詞を歌っているのに音韻がしっかりクロスしてるなんていう超人的センスが凝縮された、瞬火と黒猫のツインヴォーカルは圧巻。キャッチーなスタンダードHMナンバー#3「睡」、ポップなHR#4「鼓動」、瞬火&招鬼のデスヴォーカルが斬新なIN FLAMES彷彿のイエテボリ型メロデス#5「舞頚」、ヘヴィかつプログレッシブな#6「輪入道」、瞬火の歌うバラード#7「煙々羅」…等々どんなタッチでも自信の音楽性の中に封じ込め、決して脱線しない芯の強さがさらに強固になった印象(難を言えば前半があまりに強力すぎて竜頭蛇尾に感じる)。アートワーク、音楽、歌詞…全てをひっくるめて、表現者として尊敬すべき存在。(H)

陰陽座 / 臥龍點睛 【80点】

80年代を思わせる古典的HR/HMに独自のジャパニーズスタイルを盛り込む陰陽座6thアルバム。いきなりアメリカンロック調の曲ではじまる流れに肩すかしを食らったが、以降#2「龍の雲を得る如し」、#4「甲賀忍法帖」、#8「蛟龍の巫女」と、お得意のメロディックHMナンバーが並んで心地よい陰陽座ワールドが繰り広げられていく。メロディのセンスは冴えまくっているし組曲「義経」のような試みも面白い。ツインヴォーカルの魅力も抜群…なのだが、相変わらずの軽い音、マンネリ、妖怪度減退あたりが気になって、飽きがくるのがこれまで以上に早かった。良作だし、クセがない分一般受けはいいはず。ただ、個人的には消化不良。(H)

PAIN OF SALVATION / ENTROPIA 【80点】

PAIN OF SALVATION / THE PERFECT ELEMENT 【86点】

PARADISE LOST / REFRECTION 【80点】

PARK JIYOON / MAN 【79点】

PASSENGER / PASSENGER 【82点】

IN FLAMESのヴォーカリスト、アンダース・フリーデンと、元IN FLAMES〜GARDENIANのギタリスト、ニクラス・エンゲリンらが結成したニューバンド。サウンドの方向性の印象としてはIN FLAMESが「REROUTE TO REMAIN」で示したメロディックでモダンなロックをベースに、アンダースのノーマル声をふんだんにフィーチュアした路線。IN FLAMESではここ2作でメロディアスなヴォーカルを披露しているが、ここでは更に歌うことに力点を置いた内容で、アンダースが器用に歌える「巧い」シンガーであることを再認識させられる。IN FLAMESでのデス咆哮ひとつとっても、「COLONY」以前と「CLAYMAN」以降は明らかに違う発声であり、その変幻自在ぶりには驚かされる。サウンドがサウンドなのでニクラスのプレイもモダンテイストだが、時折覗かせるGARDENIANっぽい硬質の音が聞こえるとなんだか嬉しくなってしまう。メロディのレベルは並なのと、ガツンとしたインパクトを(勝手に)期待していた自分としては少々物足りなさも残る。(H)

PAUL LAINE / CAN'T GET ENOUGH 【79点】

PAUL SHORTINO / BACK ON TRACK 【80点】

PENDRAGON / NOT OF THIS WORLD 【83点】

PETE LESPERANCE / DOWN IN IT 【87点】

HAREM SCAREMのギタリスト、ピート・レスペランスの1stソロアルバム。ギタリストのソロアルバムとはいえ思ったよりずっと「歌モノアルバム」だ。もちろん、ギタリストとしてのキャリア・力量に疑う余地もないヒトであることからギタープレイにおいては満足だったのだが、ピートのアクのない声にのるHAREM SCAREMよりライトなモダン・ポップ寄りの心地よいサウンドの中ではギターのフィーチュア度はやや押さえ気味で(でも随所にテクニカル)、そのヴォーカル・オリエンテッドな雰囲気がとても気持ちよい。そして歌メロの質が非常に高い。ボーナストラックではHSっぽいメロディックなインスト「Trouble With Pets」収録。バンドでは本来の姿を取り戻したことでホッとしたけど、この音を聞いているとホントはもっとモダンなことがやりたいのかなぁと心配になったりして…。(H)

PINK CREAM 69 / PINK CREAM 69 【89点】

ドイツ産HMバンドの1st。ジャーマンメタル的なクサさよりももっと普遍的な音楽性。独特の声質をもつアンディ・デリスが醸し出すサウンドは飽和状態のシーンの中で十分な個性をアピールしている。この声だからハマる#1「Take Those Tears」、キャッチーこのうえない#2「Suger For Love」#4「One Step Into Paradise」、エッジの立ったシャープなリフが高揚感を煽る#3「Rolling Down A Thunder」、そして感動的なバラード#5「Close Your Eyes」と、前半だけで満腹にさせられる充実度はすばらしい。残念なのはアルバム全体の流れ。前半に良い曲がかたまりすぎて、後半は明らかにパワー不足でややトーンダウン。しかし、デビュー作にしてこれほど衝撃的な作品を提供してしまうポテンシャルには舌を巻く。(H)

PINK CREAM 69 / ONE SIZE FITS ALL 【83点】

PINK CREAM 69 / GAMES PEOPLE PLAY 【77点】

PINK CREAM 69 / ELECTRIFIED 【84点】

ダーク路線への変更、アンディ・デリスの脱退と、バンドとしての過渡期を乗り越え、本来の姿を取り戻した快作。パワフルで明快なハードロックが見事に蘇り、どんなタイプの曲も歌いこなせるデヴィッド・リードマンの声質もこのバンドに適していることがよくわかる。#1「Shame」のようなキャッチーさとダイナミックさを兼ね備えたソングライティングこそこのバンドの真骨頂だ。良い曲とそうでない曲との差があるが、居心地の良いフィールドに帰ってきた雰囲気が出ているし、次作以降もおおいに期待できる一枚だ。(H)

PINK CREAM 69 / SONIC DINAMITE 【85点】

PINK CREAM 69 / ENDANGERED 【85点】

「ERECTRIFIED」以降、安定感がぐっと増した感のあるPC69。このバンドにしか出せない独特のメロディは本作でも健在で、美しいコーラスハーモニーから連なるライブ映えしそうな#2「Shout」、憂いたっぷりのパワー・ロック・バラード#3「Promised Land」、1stの名曲「Rolling Down A Thunder」を彷彿させる重厚なリフを持った#4「Trust The Wiseman」、キャッチーなフック満載の#9「High As A Mountain」、そして哀愁迸る日本盤のみのボーナス曲#13「Queen Of Sorrow」と要所を占める楽曲の質は非常に高い。高低の広いレンジを自在に歌いこなすデヴィッド・リードマンの歌の巧さはもう説明不要だろう。ただ、良い曲とそうでない曲のギャップがあり、前述の曲以外は可もなく不可もなく、平均を下回るものも少なくない。アルバムとしてのバランスさえとれれば言うこと無し。(H)

PINK CREAM 69 / THUNDERDOME 【88点】

既にベテランバンドとしての風格を漂わせているドイツ産HR/HMバンドPINK CREAM 69の10作目。「ELECTRIFIED」以降一点の迷いもなく突き進む姿勢は本作においても全く不変。メロディの使い回しによる飽きが全くないといえばウソになるが、やはり“天才シンガー”デヴィッド・リードマンが伸びやかに歌うPC69節全開のHRチューン#3「Gods Come Together」、#7「Shelter」、#11「Another Long Make Last」といった定番曲にはいつもと変わらぬ感動と刺激を与えてくれ、ファンが求めるレベルはしっかりキープ。#12「See Your Face」のようなこれまでなかったライトな曲もいいアクセントだ。粒の揃ったバランスの良さは高く評価したいところ。(H)

PINK CREAM 69 / IN10SITY 【86点】

ドイツの老舗バンド、PINK CREAM69もすでに20年のキャリアと10枚のアルバムを重ねた。立派。この手のバンドは「変わらないこと」の美学があると思う。マンネリであっても、いつもと変わらぬ良質な音楽を提供することがファンに支持されていると思うし、そういう意味でも本作は目新しさは全くなくとも純粋に「いいなぁ」と思わせる、ある意味ミラクルな作品とも受け取れる。簡単そうで困難なレールをひたすら突き進むこのバンドはとても貴重。楽曲としてはHELLOWEENの「I Want Out」ライクなキャッチーなサビが印象的な#2「No Way Out」や、PC69らしい美しいメロディが映える#4「I'm Not Afraid」あたりが◎。

PLANET 3 / PLANET 3 【89点】

クリフ・マグネス、グレン・バラード、ジェイ・グレイドンという大御所3人による一枚きりのアルバム。僕らにしてみれば多少軽い音なのだが、作り出されるメロディの質はものすごく高いので、そのメロディだけでも十分に楽しめる。最初と真ん中と最後にオイシイ曲をいれて、アルバムとしての個性をはっきり打ち出しているあたりがベテランの味だ。ラスト曲はEDWINのCMでも使われたバラードで、産業ロックバラードの王道を極める。AORの名盤。(H)

THE POODLES / METAL WILL STAND TALL 【83点】

元MIDNIGHT SUNのヤコブ・サミュエルを中心に、ポントゥス・ノルグレン(g)など腕利きプレイヤーを揃えたスウェーデンのバンド。北欧らしい旋律とモロ80年代の香り漂う音楽性は、聞いていて恥ずかしくなるぐらい古くさくてクサくてメロディアス。特に思わず口ずさんでしまう#1〜#3の流れが凄まじい。WIG WAM、LORDIに続き、ビジュアルだけでなく内容も伴ったパンチの効いた存在だ。

PRIDE OF LIONS / PRIDE OF LIONS 【82点】

PRAYING MANTIS / NO TIME TELL LIES 【73点】

PRAYING MANTIS / PREDETOR IN DISGUIDES 【83点】

PRAYING MANTIS / CRY FOR THE NEW WORLD 【90点】

PRAYING MANTIS / TO THE POWER OF TEN 【82点】

PRAYING MANTIS / FOREVER IN TIME 【90点】

前作の出来があまりよくなかっただけにこれは嬉しい復活だ。#1「Wasted Years」、#3「Best Years」、#7「Man Behind The Mask」は彼ら独特のフレーズが満載で体の奥から高揚感が噴出する。ただ、今回はそれらの定番曲より#2「The Messiah」、#4「Blood Of An Angel」、#6「Changes」、#8「Remember My Name」のような曲に大きく耳が傾いた。新しいヴォーカルのトニー・オホーラは、確かに上手いヴォーカリストとは言えないが、このバンドには良く溶け込んでいて、時折切なく狂おしい声を発してぞくっとさせられる。特に「Changes」のエンディングではバックの素晴らしい演奏に乗せられて、脅威的なシャウトを聴かせる。天晴、MANTIS。(H)

PRAYING MANTIS/ NOWHERE TO HIDE 【84点】

常に安定感があって安心していられる数少ないバンドの新作は、トニー・オホーラが固定したこともあって前作の延長線上にある仕上がり。トニーの線の細さを指摘する声もあるが、僕はそうは思わないし、彼等の音楽にはぴったりはまっているシンガーだと思っている。#1「Nowhere To Hide」#5「Future Of The World」のような定番は絶対なくてはならないし、それ以外のミドルテンポの楽曲の充実度もなかなか。楽曲の質自体は名盤だった前作にくらべるとちょっと弱いので、次作でどういったアプローチをしてくるかが非常に気になるところだ。(H)

PRAYING MANTIS / THE JOURNEY GOES ON 【81点】

英国叙情的ハードロックバンド、PRAYING MANTISの通算7作目。個人的に歴代MANTISのシンガーの中で一番好きだったトニー・オホーラが脱退、本作ではドゥギー・ホワイト、ジョン・スローマン、トロイ兄弟&デニスのメンバー3人で分け合って歌う、といった変則的な編成でレコーディングされている。楽曲は相変わらずのPRAYING MANTIS独特の叙情メロが全編にわたって散りばめられていて安心して聴いていられるものの、専任シンガー不在なのでどうしてもアルバム全体の焦点ばぼける、王道キラーチューンがなくおとなしい曲が多い、楽曲が焼き直しっぽい…とマイナス要素も目につくところ。ボーナストラックの#10「Naked」が一番よかったというはちょっと寂しい。メロにしろサウンドにしろ、もうちょっと何とかなったはずでしょと問いかけずにはいられない。いつも過剰な期待をしてしまうだけに、物足りなさも。(H)

PRETTY MAIDS / PRETTY MAIDS 【71点】

PRETTY MAIDS / RED HOT & HEAVY 【90点】

歴史に燦然と輝くヘヴィ・メタル中のヘヴィ・メタルアルバム。荘厳なイントロ#1「Fortuna」からはじまる疾走メタルチューン#2「Back To Back」は、そのあまりに劇的な展開に背筋が凍り付く。他にもスピード感溢れるキラーチューン#5「Cold Killer」#7「Night Danger」などのリフは、ヘヴィメタルの持つ硬質な「冷たさ」と血沸き肉踊る「熱さ」を備えている。プロダクションはお世辞にもよいとは言えないが、逆にそれがいい意味でハングリーな側面を表していて音楽の魅力がストレートに伝わってくる。(H)

PRETTY MAIDS / FUTURE WORLD 【91点】

cover

87年リリース。一瞬で空を切り裂くかのような冷たくソリッドなリフと輝かしいキーボードがフィーチュアされた#1「Future World」は悶絶必至のPRETTY MAIDSの代表曲ともいえよう。当時売れていたEUROPEに接近したようなメジャー志向のポップチューンもあり、新たなマーケットに眼光を向けた貪欲で積極的な姿勢が伺われる。スロウ〜ファストへの展開が劇的な#4「Yellow Rain」、王道パワーメタルチューン#5「Loud & Proud」の流れは圧巻である。その後のPRETTY MAIDSのスタイルであるメタリックな部分とポップな部分のバランス感覚はこの辺りからすでに存在しているといえる。(H)

PRETTY MAIDS / JUMP THE GUN 【90点】

英米のマーケットを意識した前作からまた一歩前進したアルバム。プロデューサーにはロジャー・クローバーが迎えられている。ポップなメロディを中心にミディアム・ロック系のナンバーが多く、これまでお約束だった「Back To Back」や「Future World」のような硬質でヘヴィなスピード・メタルを想像するとやや肩すかしを食らうかも。しかし、元々ポップなメロディを作ることに長けていたPRETTY MAIDSの魅力を更に実感することのできる楽曲の充実振りで、アルバム全体として捉えたときに受ける統一感はこれまで以上だ。(H)

PRETTY MAIDS / SIN DICADE 【87点】

純粋によい曲をたくさん書きながらも、カバー曲#11「Please Don't Leave Me」のみが話題に上りヒットしたおかげで、知名度はあがったものの、バラードバンドとしてもイメージ定着・その後の彼らの方向までも変えてしまった(アコースティックアルバムをリリース)といういわくつきアルバム。「Please Don't Leave Me」から彼らのファンになったという人も多く(僕もそう)、最初はメタルサイドの曲に馴染めなかったりもした(僕がこのアルバムを聴いたときは、欧州HR/HMというのをほとんど聴いたことがなかった)。しかし、今こうして彼らの音源を揃え、好きなバンドになっているということは、いろいろなアルバムを通してPRETTY MAIDSや欧州HMの魅力に気づいたわけであるし、そういう意味でHMを聴くきっかけになった一枚といってもいい。前置きが長くなったが、前作に比べて音厚がシンプルになり、ギターのエッジが前面に出てよりHMバンドらしい輝きを取り戻した感のある仕上がり。#1「Running Out」#5「Come on Tough,Come on Nasty」#6「Raise Your Flag」などのパワフル&メロディアスなナンバーの出来が素晴らしいが、反面ミドルテンポの楽曲に物足りなさを感じる。先に出た「Please Don't Leave Me」はジョン・サイクスの曲だが、この名曲をロニーとケンの類い希なアレンジセンスでより素晴らしいバラードに仕上げた。哀愁たっぷりのギターの旋律とヴォーカルハーモニーが堪らない。(H)

PRETTY MAIDS / OFFSIDE 【80点】

PRETTY MAIDS / STRIPPED 【84点】

PRETTY MAIDS / SCREAM 【85点】

2枚のアコースティックアルバムを挟んでの久々のフル・アルバム。序盤3曲で普段のメロディアスなメタルチューンが並ぶが、#4「This Love」、#5「Walk Away」で一気にポップな空気に変わってくる。この辺りがアコースティック・アルバムでの影響かもしれないが、全体としてはこのアルバムをきっかけに、パワーメタルからメロディックなハードロック・バンドへの変身を遂げるエピック的作品として捉えることができる。個人的にはその流れは別に悪いとも思わないし、「FUTURE WORLD」あたりからちらつかせてきたことでもある。何よりも、前述の「This Love」「Walk Away」の出来が素晴らしく、彼らの新たに進むべき道を示しているような感じもした。(H)

PRETTY MAIDS / SCREAMIN' LIVE 【71点】

PRETTY MAIDS / SPOOKED 【91点】

メタリックな様式美が完全復活し、元来持っているポップなフィーリングも開花させた会心の名作。「SIN DICADE」「SCREAM」で物足りなかったのはやはりパワーメタルの持つドラマ性であり、ここでは#1「Freakshow」#2「Dead or Alive」#4「Fly Me Out」#7「Twisted」あたりでその血沸き肉踊るパワーメタルの本質がよみがえっている。これらの持つ普遍的な予定調和こそ彼らの持ち味であり、変わらないことの美しさなのである。かつてなかった超ヘヴィナンバー#6「Spooked」はこのアルバムの中でも個人的にはハイライトで、重くて速いリフから一転してテンポが変わるアレンジが美しい。#5「Live Until It Hurts」#9「Never Too Late」も溢れんばかりのフックに富んだポップ・ロックの名曲。しかしこれらもメタルチューンの充実さがあるからこそ浮きだつ要素だ。カバー曲#11「Hard Luck Woman」の出来が素晴らしいのに、この中では決して目立たないのは、このアルバムの持つ魅力が大きいという証明だ。(H)

PRETTY MAIDS / ANYTHING WORTH DOING IS WORTH OVERDOING 【84点】

前作「SPOOKED」は個人的にはその年のナンバーワン・アルバムだった。すっかり貫禄がでてきた彼らが、ベストアルバムを挟んでの7枚目。最近はポップな曲で実力を発揮していて、今回も「Never Too Late」ばりのポップセンスに加え、スピード感もある#3「Hell On High Heel」を持ってきた。このコーラスラインのフックはたまらない。こういったアルバムをリードする楽曲は最近なかったので、そういう点では成長が見える。#1「Snakes In Eden」#2「Destination Paradise」はお得意のHMチューン、静と動のコントラストが見事な#4「When The Angels Cry」、バラード#7「With These Eyes」も素晴らしい。それ以外ではモダンなヘヴィアレンジを多分に見せていて、新たな一面となっている。ただ、前半の良さに比べて後半はちょっと力足らず。ヘヴィなのはいいが、前作のヘヴィ・チューン「Spooked」ほどの完成度を持った曲は見あたらない。ラストの曲がポップないい曲で安心したが、それまではなんだか消化不良。全体的には安定感があってレベルは高いとは思うけど、やっぱり前作に比べると落ちる。ここまで長くやってきたベテランが、リスナーが求める水準をキープしつづける難しさを垣間見たような気がした。(H)

PRETTY MAIDS / CARPE DIEM 【83点】

「SCREAM」当時はそのポップ路線に評価が定まらなかった彼らだが、「SPOOKED」「ANYTHING WORTH DOING〜」を経て、完全に自分のスタイルとして定着させてしまった。本作もデビュー時からかわらぬスピードナンバーにはじまり、ポップ、ヘヴィな曲も織り交ぜて、非常にバランスのとれた完成度の高さを実現している。アルバム毎にロニーのシャウトは苦しさを増しているように感じるが、ケン・ハマーとのソングライターとしての天賦の才は今回も存分に発揮している。前作感じた尻窄み感もなく、こちらの予測する予定調和の中にすんなりと入っていった。ただし、ようやく最近になってヘヴィな側面が戻ってきたのに、そっち系の楽曲にイマイチインパクトに欠けるのは気になるところ。そういう意味では今までで最も地味なアルバムだ。(H)

PRETTY MAIDS / PLANET PANIC 【76点】

常に安定したクオリティの作品をリリースしてきたPRETTY MAIDSだが、傑作「SPOOKED」以降は良い曲とそうでもない曲のばらつきが目立ちはじめ、巨視的な視点で全体を眺めると徐々に質が落ちているような気がしてならなかった。そして本作ではそれがさらに加速してしまった感がする。PRETTY MAIDSといえば「正統派」という言葉がぴったり当てはまるバンドで、目新しさはないものの正統性というスタイルを高次元で維持しつづけ、それが「飽きた」と感じさせないところが良さであったのに、本作では正統的な曲には手詰まり感を感じ、加えて正統的なアプローチが減りヘヴィ寄りに移行している。全てがそういうわけではなく、特に前半はリフやギターソロの要所要所では相変わらずのメロディアスなプレイが光るが、曲調がヘヴィ路線のものが多く、結局その違和感の中でギターソロだけが浮いてるだけのような気がしてならない。もちろん、この手の曲はここ最近ちらつかせてはいたが、今回は何よりもそのスタイルが歌メロの低下まで引き起こしている点が痛い。毎回必ずリスナーを魅了していたポップでキャッチーな曲もなし。通り一辺倒になりがちなパワーメタルの中でもとりわけソングライティング、すなわち歌メロのセンスが際だっていた彼らにとって、キャッチーなフックのない曲ははっきりいって退屈だ。PRETTY MAIDSらしからぬ新鮮味がマイナス方向に作用してしまったか...。叙情バラード#6「Natural High」あたりで引き込まれるが時すでに遅し。#7「Who's Gonna Change」はアルバム中最も正統的だが、内容はモロRAINBOWなので釈然とせず。変わり果てた、というところまではいっていないので次回に期待。(H)

PRETTY MAIDS / WAKE UP TO THE REAL WORLD 【77点】

PRIDE / SIGN OF PURITY 【82点】

イギリスのメロディアスハードロックバンド、PRIDEの2ndアルバム。オープニングを飾る#1「Could You Believe」のイントロからいきなりクリス・グリーンの流麗でメロディックなギターが炸裂し、こちらのハートをがっちりと鷲掴みにする小憎い演出。甘くハスキーなマット・ミッチェルのヴォーカルとともに繰り出される良質のハードロックチューンが惜しげもなく展開していく。アグレッシブな展開でぐいぐい引っ張る#2「Somewhere Someway」、瑞々しいメロディで爽快感満点の#4「It's Just Me」、終盤を穏やかに彩る#10「Heaven's Waiting」、#11「Still Raining」と全体的にバランスの取れた聴き所の多いアルバムだ。ポップなフィーリングとハードなエッジをうまくブレンドしているセンスは素晴らしい。(H)

PRIDE OF LIONS / PRIDE OF LIONS 【82点】

PSYCHOTIC WALTS / INTO THE EVERFLOW 【70点】