Music Review : 2007年3月

HANSON / THE WALK 【85点】

10年前、お子様バンドとして一躍人気を得てグラミー賞にもノミネートされたHANSONもすっかり大人になりました。僕が普段聞くような音楽とはちょっと距離のあるジャンルなのですが、なぜか彼らの音楽はずっと追いかけていてます。メジャーレーベルとの関係を絶って自らのインデペンデント・レーベルを立ち上げ、ミュージシャンとしてのスタンスを貪欲に追いかける姿勢が、音楽に如実に現れているところに彼らのすごさを感じます。今回も心にしみわたる優れた楽曲満載です。ジャンルに関係なく、エモーショナルな表現っていいですね。

ANBERLIN / CITIES 【85点】

前作「NEVER TAKE FRIENDSHIP PERSONAL」の、特に#11「Dance, Dance Christa Pfgen」という個人的には人生の音楽遺産に認定された名曲で完全ノックアウトを食らったAnberlinの3作目。バンドとしての力量は確実にアップしている印象で、様々なタイプの曲をしっかりとまとめあげているという意味で、随分貫禄が出てきたなという印象。ノリノリのロック・チューン「Godspeed」などはイントロからして絶品だ。「(*Fin)」などで展開されるアーティスティックな表現もこのバンドの大きな魅力。

DARK TRANQUILLITY / FICTION 【86点】

コンスタントに作品をリリースしているDARK TRANQUILLITYの通算8作目のアルバム。バンドの哲学をさらに推し進めんとする姿勢は本作でも徹底的に貫かれており、いつ聴いても背筋がピンと張るような緊張感は健在。アグレッシブな曲での殺傷力、ミドルテンポな曲での効果的なキーボードによる装飾、クリーンヴォイスや女性ヴォーカルの演出など、DARK TRANQUILLITYならではのアレンジが行き届いていて、いつもと同様アルバムを通して美しい作品が出来上がっている。ただ、いつものことだが評価は総体としていいんだけど曲単位で記憶に残りにくいものが多い…のは仕方ないか。レベルが高い故の、贅沢な悩み。

PINK CREAM 69 / IN10SITY 【86点】

ドイツの老舗バンド、PINK CREAM69もすでに20年のキャリアと10枚のアルバムを重ねた。立派。この手のバンドは「変わらないこと」の美学があると思う。マンネリであっても、いつもと変わらぬ良質な音楽を提供することがファンに支持されていると思うし、そういう意味でも本作は目新しさは全くなくとも純粋に「いいなぁ」と思わせる、ある意味ミラクルな作品とも受け取れる。簡単そうで困難なレールをひたすら突き進むこのバンドはとても貴重。楽曲としてはHELLOWEENの「I Want Out」ライクなキャッチーなサビが印象的な#2「No Way Out」や、PC69らしい美しいメロディが映える#4「I'm Not Afraid」あたりが◎。

MASTERPLAN / MK II 【85点】

MASTERPLAN誕生以来、2作にわたって中心人物としてバンドを支えてきたヨルン・ランデ(Vo)とウリ・カッシュ(Dr)が脱退するという衝撃的な事件が起き、代わりにマイク・ディメオ、マイク・テラーナを加入させての3rdアルバム。個人的にはヨルンとウリのいないMASTERPLANなんて…という失望感はかなり大きく、正直新作にはあまり期待をしていなかったのだが、実際耳にしてみるとそれほど違和感なく溶け込んでいたという面においては、ローランドの功績は大きいのかなと感じた。楽曲のレベルは総じて高く、新生MASTERPLANとしては十分及第点以上だと思うが、このバンドには「ヨルン+ヨーロピアンメタル」という斬新な構図にこそ魅力を感じていただけに、どんなにいい作品でも「普通の欧州バンドの1つ」として接してしまうかもしれない…。それは好みの問題なのでどうしようもないけど、好きなバンドには変わりないので今後の活躍はもちろん期待です。

WITHIN TEMPTATION / THE HEART OF EVERYTHING 【87点】