Music Review : 2004年09月

CHILDREN OF BODOM / TRASHED, LOST & STRUNG OUT 【87点】

「HATE CREW DEATHROLL」以来1年半ぶりとなるEP音源。タイトル曲の「Trashed, Lost & Strung Out」はまさに「HATE CREW DEATHROLL」の流れを汲む現代的なヘヴィネスとHMのダイナミズムが同居した素晴らしい曲。エッヂを強調し、クラシカルなキーボードを抑え気味にする今のスタイルは初期のサウンドより好みなので、今の路線をもっと追求すれば次作ももしかしたら前作以上の出来になるのではと期待も高まる。#2「Knuckleduster」はキーボードが前面に出たミドルテンポのモダンなナンバーでこれもよい出来。#3「Bed Of Nails」はアリス・クーパーの最高傑作「TRASH(89年)」収録の名曲のカバー、#4「She Is Beautiful」はAndrew W.K.のカバー。COBはいつも意外性のある選曲で楽しませてくれるが、特に「Bed Of Nails」のチョイスはツボ突きまくり。アレンジ最高ですわ。(H)

EDGUY / HELLFIRE CLUB 【88点】

ドイツのメロディック・パワーメタルバンドの6作目。今までなんとなく接する機会がないというかとっつきづらい感じがあったのだが、こうして聴いてみるとその障壁は一体なんだったのだと自分でも首を傾げてしまう。ドラマティックな展開、琴線に触れるメロディ、血流の勢いが増すスピード、どれをとってもメロパワの魅力を存分に詰め込んだ力作。シーンをひっぱるだけの存在であることに疑う余地なし。特にどんな状況であっても体をくねらせ悶絶させるであろう#3「We Don't Need A Hero」は総てのメタル・ファンを総立ちさせるジャーマンメタルの、いやヘヴィメタルの名曲だろう。(H)

IN FLAMES / SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE [digi-pack] 【95点】

デジパック仕様。日本盤や通常の輸入盤には収録されていないボーナストラック「Discover Me Like Emptiness」が収録されている。本作の路線と同一の浮遊感のあるミドルテンポの曲で、クオリティは本編の曲となんら遜色ない素晴らしい曲。正直いってこの曲を本編のラストに入れて欲しかった。ファンにとってはマストアイテムでしょう。本編レビューは「I」のページ参照。(H)

THERION / LEMURIA/SIRIUS B 【--点】

ANGRA / TEMPLE OF SHADOWS 【92点】

ブラジルのHMバンド、ANGRAの5作目は十字軍の騎士を題材にしたコンセプトアルバム。復活作「REBIRTH」で初めて自分でも聴けるバンドだなと思うようになったが、本作を聞くとこのバンドがどうこうというより、視点がシーン全体に広がり、全てを包括したうえで「凄い!」と言いたくなる素晴らしい作品と実感。 オープニングでのドラマティックな掴み、お約束の疾走曲はハイレベルの予定調和。「Waiting Silence」のようなプログレ風味の曲、ボサノバやジャズを取り入れた曲、終盤に連なるスローな曲に至るまで少しの隙もなく筋の通ったコンセプトアルバムという大作を仕上げてしまった、その構成力に脱帽だ。個人的には疾走曲よりミドル〜スローな曲のほうが楽しめた。エド・ファラスキの歌唱力は最高。ゲストのカイ・ハンセンは…イマイチでした。(H)

WINTERSUN / WINTERSUN 【--点】

NEGATIVE / SWEET & DECEITFUL 【80点/83点】

本国より遅れて日本デビューを果たしたNEGATIVEの2nd。日本では今年2枚目ということになる。デビューアルバムは“若さと危うさ”が同居した、発展途上ながらも期待を持てる内容だったのでやはり2作目は勝負作といっていい位置づけになるのだろうか。率直な感想をいえば、楽曲能力、演奏力、表現力とも単調でツメが甘いなぁという印象。単調なのはやはりフロントマンのヨンネ・アーロンのヴォーカルの表現力に尽きるのかな。このバンドが名実ともにスターダムにのし上がるには、この画一的なヴォーカルは大きな壁となるのでは。ただ、その危うさが逆に魅力を引き出したともいえる#6「About My Sorrow」はかなり良かった。とはいえ、それなりにいい曲もあるなと思いつつも、ボーナストラックまで含めると似たような曲が多すぎて何度聴いても途中でおなかいっぱい。今何曲目なのかどうでもよくなってくる感覚におそわれるのが残念。(H)

2004年1月に日本デビューを果たしたNEGATIVEの2ndアルバム。前作と同じ路線を踏まえつつ、詩、曲の両面では前作を上回る出来に仕上がり、キャッチーかつ哀愁漂うメロディーはさらなる輝きを放っている。新たにキーボード奏者をメンバーに加えたことにより、アルバム自体の統一性も増しているといえる。本作の目玉はなんと言っても、SENTENCEDのVo、ヴィレ・レイヒアラの参加した「Until You're Mine」である。NEGATIVEが持つ哀愁にヴィレのメランコリックな歌声が加味され、より重厚な曲に仕上がっている(ヴィレ・レイヒアラの旨さのほうがかなり目立ってはいるが…)。Voのヨンネ・アーロンの表現力が乏しく、全体的に単調と感じる点を取り除くことができるならば、今後の作品に大きな影響を及ぼすことは間違いないだろう。(K)