Music Review : 2004年06月

V.A / MONSTERS OF METAL(DVD) 【82点】

NUCLEAR BLASTに所属するバンドによる、240分にも及ぶコンピレーションDVD。参加バンドは50組。人気のあのバンドから聞いたことないマイナーなバンドまで、メタル、デス、ゴシック、スラッシュ、インダストリアル等々とにかくボリューム満点の内容。HELLOWEEN、IN FLAMES、SOILWORK、CHILDREN OF BODOM、MASTERPLAN(1stアルバムで輸入盤のみに収録されていた「Enlighetn Me」のクリップで、この曲がまた素晴らしい!)といった自分の贔屓バンドや、普段は主食にしてないけど本質的には好きなHAMMERFALL、STRATVARIUS、SONATA ARCTICA、THUNDERSTONE等、これ一枚で視野が広がること間違いなしだ。IRON MAIDENの存在感はやはりズバ抜けている。(H)

BoA / MY NAME 【72点】

TEN / RETURN TO EVERMORE 【81点】

ヴィニー・バーンズが脱退した後も2作にわたる叙情詩「ONCE AND FUTURE KING」をリリースするなど、相変わらずのワーカホリックぶりでリリースを続けているゲイリー・ヒューズ。もちろんソロ作もよかったが、全編通してゲイリーの歌声が聴ける、バンドとしてのアルバムは本当に待ち遠しかった。新加入のクリス・フランシスについてはそれほど期待していなかったが、「ONCE〜」ではそれなりのパフォーマンスを見せてくれたので、このアルバムではさらにバンドに溶け込んでくれているとの希望的観測もあって臨んだのだが…。正直言って、TENの作品としては不満の多い内容。最初の2曲のただダラダラと長いイントロや#3「Evermore」の最初の安っぽいフィドル(?)、#6「Even The Ghosts Cry」の導入部での意味不明(失礼)なGソロ…と、緊張感を殺いだり遮断したりするような場面がたくさん。このバンドは冗長な曲の中にもしっかりドラマを作り出していたのだけど、今回はちとキツイ。楽曲面においては#2「Dreamtide」の素晴らしくキャッチーなサビや、バラードのキラーチューン#4「Sail Away」あたりに最大級の魅力を感じたものの、それ以外の曲はどれも平均的。
ギタリストが変わったんだから仕方ないけど、このバンドのトーン&マナーのようなものはどうしても違ってしまうので、「ゲイリーの歌があればTEN」とは割り切れない僕のようなリスナーにはちょっと厳しい。もうすこし、ゲイリーのソングライティングのセンスでカバーしてくれるとよかったんだけど。(H)

TMG / TMG I 【80点】

B'zの松本孝弘のソロ・プロジェクトだがメンツときたらエリック・マーティン、ジャック・ブレイズ、ブライアン・ティッシーという超豪華メンバーを引き連れてのバンド形式のプロジェクトだ。アルバムタイトルに「1」とつけるぐらいだから、今後も引き続き継続していく意欲も伺われる。洋楽大好き!な松本の趣味(バンド名とか特に)が全編に散りばめられ、そこに意識的に和のテイストを注入している点が新鮮。しかし、メンツのせいかわからないが「情緒」を感じるまでは至らず。楽曲もシングル意外はこれといってズバ抜けた曲も見あたらないのが残念だった。どうせこのメンツでいくなら、エリックやジャックにも曲を書かせてみたら面白いかも。あとこれは勝手な独り言だが、ジャック・ブレイズ大好きなので、彼にも歌ってほしかったり。(H)

DIE HAPPY / THE WEIGHT OF CIRCUMSTANCES 【80点】

EVANESCENCEが全世界を席巻し、ゴシック・ロックがメインストリームのジャンルとして脚光を浴びたが、このDIE HAPPYというバンドも同じジャンルに属するといえるだろう。チェコ産でドイツで活動する4人組。美貌の女性フロントマン、マルタ・ヤンドヴァを中心に結成され、これが3枚目のアルバムとなるようだ。基本路線はダークでゴシックなロックだが、EVANESCENCEに比べるとポップ寄りで、もちろんヒットする要素も備えている。そこはこのアルバムを手がける「史上最強」と呼ばれるプロデューサー・チーム、THE MATRIXの手腕ともいえるだろう。ただ、曲作りにおいてはまだまだツメが甘いというか、EVANESCENCEのようにダークな泣きメロでグイグイ押すわけでもなく、ポップな曲でもフックが足りないなど、物足りなさが残る。一番良かった#13「Right Here To Your Face」が日本盤ボーナスだったというのも残念。ビジュアル的にはグンバツなだけに(マルタ嬢はマジかわいい)、クオリティ次第ではさらなるスターダムが期待できそう。(H)

ORPHANED LAND / MABOOL 【88点】

なんなんだこれは一体…。こんな感触は未だ味わったことがない。中東はイスラエル出身のORPHANED LANDが8年振りにリリースしたという3rdアルバム。中東民俗音楽を全編に配した壮大なプログレッシブ・ゴシック・デスメタルといえばいいのだろうか。普段あまり馴染みもなければ正直好みでもない中東独特の音楽…のはずなのに、ここにはまさに日本人が諸手をあげて喜びそうな“泣き”のメロディに溢れている。なんだかよくわからないが、演歌がメタルに通じるのと同じような感覚なのだろうか。欧州寄りの湿り気、デス・ヴォイスとノーマル・ヴォイスの使い分け、DREAM THEATERのような情景描写と緻密な音づくり…と全てにおいてレベルが高い。全く恐れ入りました。(H)

DARE / BENEATH THE SHINING WATER 【97点】

covercover

「BELIEF」以来約3年ぶりとなる、筆者最愛のバンドの5th。前作のようなケルト風サウンドは控え目で、位置づけとしては「CALM BEFORE THE STORM」に近いところにあるいった印象。どの曲も似たような雰囲気とテンポなので、聴く人によっては退屈なアルバムかもしれないが、僕自身はこのバンドに変化など全く望んでいないし、下手にチャレンジ精神見せました的な楽曲を入れてアルバムの雰囲気を変えてしまうよりはずっと良い。
楽曲面ではダーレン・ワートンのソングライティングは相変わらず神レベルで冴え渡り、しっとりとした情景を描きながら気分良く最後まで聴かせてくれる。曲に身を任せていると心が浄化されていく気分になるのはこのバンドならではの独特の空気感だ。モイスチャーのかかったイントロで始まるオープニングトラック#1「Sea of Rose」はDAREのあらゆる魅力を詰め込んだ曲だし、タイトルトラックの#4「Beneath The Shining Water」は涙腺をビンビン刺激する、DARE史上でも「King Of Spades」、「Calm Before The Storm」、「Ashes」、「We Were Friend」等と並ぶ最高レベルのバラード。ダーレンの情感たっぷりのハスキーヴォイスに感動的なサビ。マジたまらん。非常にキャッチーなコーラスをもつ#2「Days Gone By」、#7「I'll Be the Wind」やU2っぽい#5「The Battle That You've Won」あたりも素晴らしい。楽曲レベル・メロディの質は前2作に全く遜色なく大満足だが、そうなるとやはりポイントとなるのは前作その量が激減したアンドリュー・ムーアのGパート。DAREが単なるAORバンドでもソフトロックバンドでもないのは、アンディの奏でる熱くエモーショナルなギタープレイによって聴く者の体温を上昇させてくれるからだ。#1「Sea of Rose」のラスト、ブレイクのあとで官能的なソロを披露するなど、前作よりは量的に増えている感じで非常に嬉しいところである。質はもちろん◎。
総合的にみると、やはりギターのフィーチュア度で「CALM〜」並にならないかぎり、どんなに楽曲がよくても僕の中で「CALM〜」を超えることはあり得ないが、文句無しにマスターピース決定の名盤である。(H)

SCORPIONS / UNBRRAKABLE 【75点】

ドイツの重鎮ハードロックバンド、SCORPIONSの通算14枚目のアルバム。昔のサウンドは望むべくもないが、(特に前半では)HRの醍醐味を味わえるアルバムには仕上がっている。個人的にそれほど興味のあるバンドではないので特に強く求めるものというのもないのだが、「PURE INSTINCT」あたりのメロディの感触だったらラッキーかなぁと思って聴いたけれど自分の考えていたものに比べると物足りなさが後味として残った。ギターの仕事ぶりもイマイチかな。クラウス・マイネは見た目かなり老け込んでるけど、それとは裏腹に相変わらずの哀愁ヴォイスは素晴らしい。(H)