Music Review : 2004年05月

SR-71 / HERE WE GO AGAIN 【79点】

THE DATSUNS / OUTTA SIGHT/OUTTA MIND 【75点】

THE CALLING / TWO 【90点】

アレックス・バンド率いるアメリカンロックバンドの2ndアルバム。内部でのゴタゴタを乗り越え、20代を迎えたメンバーの器量が試される注目のアルバムだ。デビューアルバムの時点で既に完成された器の大きいロックサウンドを披露していたが、本作では全てにおいてさらなる研鑽が感じられ、すでに大物メジャーバンドとしての佇まい、雰囲気が漂った貫禄抜群の作品に仕上がっている。#1「One By One」、#2「Our Live」、#6「Anything」といった王道ロック・ソングのヒット性に富んだ力強い楽曲は特に惹かれるものがあるし、また#7「If Only」や#11「You Hope」といったバラードナンバーにこめられた情感、深遠さにはより成長の跡が感じられる。それにしても楽曲の魅力を何倍にも増幅させるアレックス・バンドのヴォーカルは素晴らしい。特に低音域でグッと聴かせる厚みと深みは他では味わえない感動がある。今やこの手のバンドは山ほど存在するが、十把一絡げのバンドとはひと味もふた味も違うレベルの高さを見せつけてくれている。まさしく現代ロックシーンの旗手として、その存在感をもっともっと膨らませて欲しいバンドだ。(H)

KILLSWITCH ENGAGE / THE END OF HEARTACHE 【87点】

ヴォーカルが黒人のハワード・ジョーンズに交替した3rd。メロディと楽曲の質、メリハリのある激烈サウンド、各プレイヤーのパフォーマンスと総てにおいてランクアップした印象だ。ハードコア+メロデスといった基本姿勢を貫きつつ、より練り込まれた静と動のコントラストから生まれる激性に圧倒的な説得力を感じる。それは新Voのハワード・ジョーンズのド迫力な圧力にも余裕すら伺える凄まじい咆哮をみせつつも、クリーンパートでは繊細なタッチでメロディをなぞるという、人並み外れた表現力にもよるところだろう。#3「When Darkness Falls」、#4「Rose Of Sharyn」あたりはこの作品の中でも格別の味わいだ。個人的にエクストリーム系ミュージックではIN FLAMESのすぐ背後に迫っているポジションとして今後も目が離せないバンド。(H)

KILLSWITCH ENGAGE / ALIVE OR JUST BREATHING 【84点】

米マサチューセッツ出身のニュースクールハードコア+メロディックメタル(というのがよくわからないけど)バンドの2nd。僕のようなリスナーには最近のIN FLAMESやSOILWORKといった北欧メロディック・デス的エッセンスを思い出させるメロディとサウンドで、メランコリックな叙情性と破壊的な爆発力が組合わさる衝動が心地よい、感覚的に好きなバンド。そのメタリックな硬質感と情感、スピード感のある曲での殺傷力は前述のバンドに匹敵するボリュームで、次々と繰り広げられるドラマに飲み込まれていく。特に#2「Self Revolution」などはIN FLAMESのリフ+ARCH ENEMYの暴虐性+SOILWORKのメロディックなコーラスといった感じのキラーチューン。(H)

AVRIL LAVIGNE / UNDER MY SKIN 【83点】

優れた楽曲、歌唱力にロック・アーティストらしい風貌と不良っぽさ・若さというエネルギーを加え、爆発的なセールスを記録した1stアルバム1枚で瞬く間にメジャー・アーティストの仲間入りを果たしたアヴリル・ラヴィーンの2nd。大物プロデューサーを迎え、2作目にしてさらに上のレベルへの地盤固めができあがった格好だ。「UNDER MY SKIN」とのタイトルは彼女の内面を表したとのことで、成熟度をアピールしている。第一印象としては楽曲はそこそこ粒ぞろいだけど随分落ち着いちゃったなぁというところで、1stのような元気でポップなナンバーがないからだろうが、そこが魅力だったのにという少々残念な気持ちも。大人になるのが怖いという詩を歌ったバラード#7「Nobody's Home」が一番良かったというのもまた微妙なトコだが、たしかにこのアルバムでは繊細さという意味では格段の成長を遂げている。そう割り切ればいいアルバムだ。(H)

THRICE / THE ARTIST IN THE AMBULANCE 【90点】

カリフォルニア州出身のエモ・パンク・メタルバンドの、2枚のインディーズアルバムを経てのメジャーデビュー作。エモ・パンク、スクリーモ、メロディック・メタル・パンク…などいろいろなカテゴライズがされているようだが、そんな形容はむしろ邪魔だと思うぐらいロックを愛する全ての人に訴えかける素晴らしい音楽。METALLICAやIRON MAIDENなどを彷彿させるちょっと懐かしいメタルを思い出させながらも、パンキッシュに、モダンに疾走するサウンドは非常に新鮮。時にはメロディック・デスメタルっぽい鋭角的なリフが聴けたりと、意外な展開も心を躍らせる。シンプル&コンパクトなサウンドなのに、芳醇でエモーショナルでキャッチーなメロディによって壮大なドラマが生み出される。心憎いヤツらだ。#3「All That Left」、#5「Stare At The Sun」、#10「The Artist In The Amburance」、#12「Don't Tell And We Won't Ask」、#13「Eclipse」あたりがツボ。ヒーローになれるポテンシャルが充満したバンド。期待大!(H)

THE RASMUS / DEAD LETTERS 【82点】

フィンランドではかなりの人気があるというロックバンドの5th。個性的なヴォーカルを武器に、欧州のマイナー調の楽曲にポップなタッチもある非常に聞きやすいサウンド。アルバム全体に起伏がなく平均的な曲ばかりなのであまり印象には残らなかった…というのが数回聞いての感想だったが、聞き込むうちに良いメロディの宝庫なんだと気づかされた。(H)

VANILLA SKY / WAITING FOR SOMETHING 【75点】

イタリア出身のメロディック・パンク(?)バンドの1stアルバム。耳障りの良いメロディックなサウンドで、爽快さと甘美な感じが味わえる。疾走感のある曲の構成もなかなか。THE ATARISあたりが好きならイケるかと。個人的な好みでいうとストライクゾーンからちょっと外れる変化球という感じで、試聴したときに比べて購入後本気聴きでそれほどハマらなかった。(H)