Music Review : 2004年03月

IN FLAMES / SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE 【95点】

cover

世界進出を目論んだ前作「REROUTE TO REMAIN」ではモダンなサウンドを導入し賛否両論を生んだが、常に前進しようとするバンドの意欲が表れた自然な進化であり、決してIN FLAMESの根底に流れる血を汚したような安易なものではないと思う。方法論としても出来上がったサウンドにしても「賛」どころか「絶賛」できた名盤で、元々IN FLAMES贔屓の血に染められていたものがまた新しい血によって全身塗り替えられるぐらい衝撃的だった。その方向性をさらに押し進めた本作は、まさに「REROUTE〜」の続編といった印象。ファーストインプレッションこそ、ブルータル・デスの#1「F(r)iend」の残像がひきずったのと(IN FLAMES=オープニングトラックは叙情美溢れる名曲、なる公式を勝手に思い描いていたので…)、全体を通してコーラスのメロディがちょっと地味に映って正直テンションが上がらないまま聴き終えたのだが、このサウンドを理解するには何度も聞き込みが必要な複雑さと密度の濃さがあることは前回の学習で百も承知であり、そういう意味ではある種の安心感と期待感に包まれた。そもそも「REROUTE〜」で驚嘆したのは何と言ってもリフとリズム。IN FLAMESといえばメロディが肝、という認識を良い意味でそれらの要素が追い抜いていく感覚…それと同様のリフとリズムの麻薬的魔力は本作でも抜群に効いている。#2「The Quiet Place」や#6「My Sweet Shadow」などの浮遊感+重いリズムなどは表現として完全に確立された感がある。今回もまた「進化した」というに足る底なしの才能を見せつけられた。ま、いまだに地味かなぁといった印象はあるものの、予想通り、回数を重ねるたびに好きになっていく楽曲ばかりずらりで、永く愛せるマスターピースなアルバムになりそうだ。(H)

IN FLAMES / THE QUICK PLACE 【85点】

「SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE」からの1stシングルは、「REROUTE〜」から描いてきたモダンな浮遊感の雰囲気にメリハリのある展開と印象的なメロディを乗せた、いまのIN FLAMESを表現したひとつの完成形を示した曲。最初の印象はそれほど強くなく、いいのか、悪いのか正直わからない部分もあったのだが、じわじわと染み込んでいく味わい深さがあり、気がついたらアルバム中最も好きな曲のひとつになった。なんなのだろうこのマジックは。カップリングはその「SOUNDTRACK〜」の中でこれまた名曲と呼べる「My Sweet Shadow」のリミックス。デジタル処理が施されているがなかなか良い。北欧民謡の#3「VARMLANDSVISAN」はライブ音源で、アコースティックインストの小曲。このほかに表題曲のPV(やっぱりこれが目当てになるかな)、アルバムのレコーディング風景をまとめたムービー、それからスクリーンセイバーがついている。(H)

HANSON / UNDERNEATH 【82点】

約4年ぶりとなる通算3作目のアルバム。肉体的にも精神的にも大人へのステップアップを踏み、音楽性においてもHANSONの理想型を作り出したと思っている前作「THIS TIME AROUND」からどのようにレベルアップしてきたかと期待していたが、正直なところ「まぁ、無難な作品。」ぐらいのところで、期待を超えるような内容ではなかったかなというのが感想。#3「Penny & Me」、#4「Underneath」あたりは前作の名曲と双肩のレベルだが、全体を通して前作のほうが哀しいところはより哀しく、遊ぶところはより遊ぶ、といった姿勢が明確だったような気がする。ボーナス曲を含め、楽曲の多さも少々間延びした印象を与えてしまう。自分にとってはHANSONは一流のアーティストに脱皮したミュージシャン。もうひとつ上のステップでの感動を求む。(H)

NOCTURNAL RITES / NEW WORLD MESSIAH 【81点】

陰陽座 / 夢幻泡影 【89点】

静かに盛り上がるオープニング#1「夢幻」での黒猫の透き通った美しいヴォーカルで既に陰陽座ワールドにトリップ。続く#2「邪魅の抱擁」でのメタル度100%のイントロを聴いたあたりでHMのドラマティシズムが全開だ。深遠なる和の世界観とそれを歌詞に乗せるばかりか、同時に違う歌詞を歌っているのに音韻がしっかりクロスしてるなんていう超人的センスが凝縮された、瞬火と黒猫のツインヴォーカルは圧巻。キャッチーなスタンダードHMナンバー#3「睡」、ポップなHR#4「鼓動」、瞬火&招鬼のデスヴォーカルが斬新なIN FLAMES彷彿のイエテボリ型メロデス#5「舞頚」、ヘヴィかつプログレッシブな#6「輪入道」、瞬火の歌うバラード#7「煙々羅」…等々どんなタッチでも自信の音楽性の中に封じ込め、決して脱線しない芯の強さがさらに強固になった印象(難を言えば前半があまりに強力すぎて竜頭蛇尾に感じる)。アートワーク、音楽、歌詞…全てをひっくるめて、表現者として尊敬すべき存在。(H)