Music Review : 2004年02月

HOUSE OF LORDS / THE POWER AND THE MYTH 【72点】

当時スーパープロジェクトとしてデビューし、ドラマティックなアメリカンHRサウンドでマニアの間でも人気が高かったHOUSE OF LORDSが再結成してリリースされた12年ぶりの4thアルバム。レコーディング途中で中心メンバーであるグレッグ・ジェフリア(Key)が脱退というショッキングな事件が起こったが、元DREAM THEATERのデレク・シェリニアンが穴を埋める形で完成させた。オリエンタルなムードと叙情的な展開の#1「Today」を聴いた時点では過去の感動再来といった感じでワクワクしたのだが、それ以降はつまらない楽曲のオンパレードで一気に興醒め。おおらかに伸び伸びと歌うのが魅力だったジェームズ・クリスチャンのヴォーカルも、このダークなサウンドの中では魅力半減。12年前と同じもの(「What's Forever For」とか「Spirit Of Love」とか「Inside You」とか)を望むのはこっちの勝手かもしれないけど、途中で誰のバンド聴いてるのかわからなくなってきた(特に表題曲のインストの#5)。辛うじて#10「Child Of Rage」では彼の歌の真髄を感じることはできたけれども、全体を通してあまりにも自分のHOUSE OF LORDS像とかけ離れていたことがショックでショックで…。(H)

BOWES & MORLEY / MO'S BARBEQUE 【90点】

ブリティッシュロックの真髄を究めるバンド、THUNDERが2001年に解散後、バンドのブレーンであったダニー・ボウズ(Vo)、ルーク・モーリー(G)によって結成されたプロジェクトBOWES & MORLEY。2003年にTHUNDERが再結成したあともこの名義でリリースとなれば、ファンとしても楽しみが増えて良い。今回も様々なアーティストとともに、自らのルーツを咀嚼しながら等身大の音楽を自然体で表現しており、聴き手を心地よさで満たしてくれる素晴らしい仕上がりになっている。クレジットにダニーは“ヴォーカル、悩み事一手引受”、クリス・チャイルズは“ベース、踊り”と明記してしまうセンス・オブ・ユーモアも相変わらず。彼らの作り出す音楽はどれも素晴らしいのだが、特に今回の作品のベクトルが自分の波長とマッチしていて個人的にこれまで以上に楽しめる内容。どの曲にも美しいメロディと穏やかな温もりがこめられており、ダニーの絶品のヴォーカル、ルークの情感豊かなギタープレイともに熟れた果実のような味わいだ。カバー曲は4曲。いずれも原曲を知らないがアルバムの中での溶け込み具合からしても、タイムレスなアルバムであることは間違いない。(H)

TNT / MY RELIGION 【82点】

先行EP「TASTE」を挟んでの久々のフルレンスアルバム。近年のモダンな雰囲気も残しつつ往年の美意識を復活させようとする姿勢はベストな選択か。「REALIZED FANTASIES」がTNTのきっかけでいまだにこのアルバムこそ最高傑作であると考えている自分にとってはトニー・ハーネル(Vo)とロニー・ル・テクロ(G)という二人の超個性的なプレイヤーが作り出す音は、煌びやかな北欧風だろうがモダンロックだろうがまぎれもなくTNTであるので、いい曲を書いてくれるかどうかが自分としての判断基準。#1「Lonely Night」なんかはそれを軽くクリアする佳曲だし(ただし尻切れトンボのアウトロは納得いかない)、アルバム全体を見渡しても往年のスタイルを求めるTNTファンならば満足を得られる内容のはず。ま、もっといい曲が書けるバンドだ、との思いからやや消化不良なところもあるけれども、気持ちとしてはこの作品での姿勢は嬉しいものです。(H)

FOR MY PAIN / FALLEN 【88点】

昨今HR/HM界を大いに賑わしているフィンランド産ゴシックメタルバンドの中でも、このFOR MY PAINというバンドは全てにおいて高いレベルで、その魅力を余すことなく伝える「業界スタンダード」的バンドだ。ETERNAL TEARS OF SORROW、NIGHTWISHをはじめフィンランドのゴシック人脈を集めてメンバーが構成されており、そのキャリアに恥じぬ安定したプレイと楽曲のクオリティの高さは文句のつけようがない。SENTENCEDやTO/DIE/FORほどクセが強くないものの十分に色気を感じるヴォーカルのおかげでより普遍性をアピールできており、入門にも最適かと。フレーズの節々から哀愁を発散する楽曲には力強いロマンが感じられて胸のあたりを鷲掴みにされる場面も多い。特に#1「My Wound Is Deeper Than Yours」、#3「Queen Misery」、#5「Rapture Of Lust」、#9「Autumn Harmony」あたりが強烈。(H)

SHADOWMAN / LAND OF THE LIVING 【83点】

ERIKA / COLD WINTER NIGHT(Re-issue) 【85点】

イングヴェイ・マルムスティーンの元妻・エリカの90年発売アルバムの再発(ボーナス3曲追加)。いまだに某専門誌などで取り上げられることもあり、北欧の煌びやかなメロディが楽しめるアルバムとして評価が高い。事実、全編にわたる哀愁系北欧ハードポップチューンの数々は非常にクオリティが高く、これだけいろんな音楽を聴いているにも関わらず普遍的な感動を与えてくれる作品だ。特に#2「Together We're Lost」、#3「Line On Fire」、#6「Cold Winter Night」あたりのフック満載のサビメロは胸のあたりを鷲掴みされてしまうほど強力。なお、イングヴェイは#9「Emergency」にて参加。(H)