真・善・美
下諏訪向陽 弓道で鮮やか逆転V 全国高校総体 | 信濃毎日新聞
高校総体で長野県代表の下諏訪向陽高校女子弓道部が劇的な逆転優勝。5人立ち(ひとり4射)20射で、前半10射中4中しかあたらなかったピンチを、後半10射中9中というものすごい追い上げで逆転。
僕の高校時代最後の大会では、チームの前半の不振が響いて結局20射9中という中途半端な成績で敗退したのを思い出したんだけど、弓道の真髄である「真・善・美」がなければ下諏訪向陽は決勝という大舞台でこの結果を出せなかっただろうな。素晴らしい。
弓に「狙い」という便利な機能はない。正しく、ごまかしや偽りのない射とはどういうものかを探求する「真」、常に平静で平常心を失わない「善」、そして力任せでなく弓を正しく均等に押し開き、終始一貫した射法礼節を遂行する「美」という三位一体が完成してやっと矢は的に当たるのですね。本来。
弓道って多分に精神的影響が大きく左右するんです。僕はどちらかというと「当たるほう」だったと思いますが、的中する人がなりやすい「早気(はやけ)」に随分悩まされました。つまり型が完成する前に(口元に矢がくるまで待てずに)矢を放ってしまう症状です。普通に考えればなんでそんなの治らないの?って感じなんですが、やっかいなことに早気でも的にバンバン当たってしまうんですね。このパラドックスによって、つまりはなかなか治らない。誰もが経験することです。何十年やってるベテランだって早気になっちゃうんです。
結局、これは「偽り」であり「平常心を失っている」であり「正しい射型」ではない。つまりどんなに的に当たっても「真・善・美」とは程遠い。実際、僕は弐段の昇段審査には2回落ちて、最後なんとか受かったという状態でした。練習で絶好調なとき、4射打って「○○○×」というのを5回連続でやったことがあります。あと1本当てれば「皆中」という状況で、精神状態ががらっと変わってしまう証拠です。3本当たるという好成績でさえ、そんなことを続ければ当然虎夫(先生)の罵声が飛んでくるわけです。その弱い部分を克服してくのが弓道の道。
この逆転勝利のニュースに、久々に身震いを覚えました。
[ SPORTS ] Posted by hara at 2006年08月10日 09:27